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他のパネリストの提出したレジメ |
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夢を広げるために バイオリニスト 和波 たかよし氏 |
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HPのユニバーサルデザイン化ひとつの試み NHK 泉谷 八千代 氏 |
画面を見ることのできない視覚障害者がパソコンを操作して、多くの情報を入手したり発信したりしているという事実は、残念ながらまださほど広く知られていない。私たちは、パソコンの作る音声に頼ってそれらの作業を行うわけだが、これが可能となったのは、「情報のバリアをなんとか取り除きたい」と願う視覚障害者の工夫と努力、それを理解し支援した多くの開発者や企業の協力のお陰であることを、決して忘れてはならない。 私が本格的にパソコンで文字を書いたり、通信による情報入手を始めたのは、50代に入ってからである。当時はMS-DOSを利用していたが、急速に普及しつつあったWindows95 が音声化される見通しは暗く、せっかく新たな希望を胸にパソコンと取り組み始めた私は、視覚障害者のパソコン環境の厳しさを強く意識せざるを得なかった。 だが、現在の私は、パソコン利用の90パーセント以上をWindows で行っている。Windows の画面を音声化する試みがめざましい発展を見せ、私たちがDOSの頃と同じように安心して使えるワープロやエディタ、点字文書を作成するソフトも増えた。さらに、IBM社が発表した「ホームページ・リーダー」など、インターネットのホームページ閲覧ソフトによって、私たちの世界は飛躍的に広がったのである。 あるウェッブ製作会社の手で私のホームページが立ち上げられたのは、2年余り前のことだった。私がメールなどでデータを提供し、それをページに掲載してもらっているが、昨年の秋から、私が直接書き込んで更新する「日記ページ」を設けた。これを読んだ方々からの感想のメールも頻繁に届くようになった。私自身の書いたものを、世界のどこにいても瞬時に読んでもらえるなど、少し前までは想像もつかぬことであった。 私は、海外へ出かけるときもパソコンを携帯し、メールで仕事の連絡を取り合ったり日本の新聞記事を読むなど、生活の一部として役立てている。妻に任せねばならなかった仕事も、少しずつ肩代わりできるようになった。 しかし、問題は多い。たとえば、いわゆるネットサーフィンをして辿り着いたページが、音声処理の不可能な画像データばかりで内容が理解できず、あきらめねばならぬケースも少なくない。このようなときは、門前払いを食わされたような悲しい気持ちになり、情報のバリアを切実に感じてしまう。 また、巷では携帯電話でインターネットにアクセスしたり、メールをやりとりする人も増えつつある。だが、そうした携帯端末は、入手した情報やこちらが入力した文字の音声化をサポートしていないので、私は1キロを越えるパソコンを持ち歩かなければ、旅先でインターネットを利用することができない。ラジオを聴く要領でホームページが読めたり、電話をかける感覚でメールの送受信ができたらどんなに素晴らしいだろう。仕事柄旅行の多い私は、近い将来そんな夢が実現することを、強く期待している。 目覚ましい発達を続ける電子文明が、視覚障害者に対して新たなバリアを築くことのないよう、情報提者、機器の開発者、それにユーザーが手を携えて行かなくてはならないと思う。コンピューターとはおよそ縁のない仕事をしている私に、このような学会で意見を述べる機会を与えていただいたことに、心から感謝している。私の体験や要望をお話しすることで、視覚障害者の情報処理の可能性をさらに広げるため少しでもお役に立てるなら、これに勝る喜びはない。 |
現在のインターネット環境でなし得るバリアフリーとは何か?
私たちが昨年立ち上げたHPで実践した問いはこの一語に尽きる。 インターネット、ブラウザー、GUI、キーボード、マウス・・・ 現在の制約された環境の中でユニバーサルデザインを可能ならしめる術を実践した。 1. 対象 ・HPリーダーを使用する視覚障害者 ・ 弱視、色覚特性のある方々 ・ 補助マウスを使用している方 ・知的障害のある方 ・聴覚障害者 ・このような特性を備えた高齢者 2.作る際心がけたこと 当事者の検証と声を反映。ともに作るHPを目指した。 3. HPの全体の運営と方針 ・現在放送しているNHKの福祉番組「きらっといきる」をより楽しむための障害のある方々の「広場」 ・番組放送直前にアップ。聴覚障害者の方々への補完サービスとして内容を詳しく紹介 ・ぴーぷる・ぴーぷるのコーナーは全国の仲間が見るページ メールや郵便で詩、写真、絵画、エッセーなどの作品募集を行い、それをHP上に掲載。顔写真やメッセージなども許可を得て掲載。仲間の姿や考えがより深く分かる集いの場を作った。 4. 作成上の工夫 ・HPリーダーは読み下しが基本。視覚的には面として認識されるものを読み下しても論理に矛盾が無いようにHTML上で配慮。画像にはすべてALTのタグ。特に文章の間に出現する画像には「画像説明○○説明おわり」と記すなど当事者の意見を反映した。 ・リンクボタンは大きく、間を取って手にふるえのある方の利用を想定し、リンクボタンの大きさを決定した。また、ボタンとボタンの間は選択しやすい様、間を空けた。 ・背景と文字の組み合わせ、フォントの大きさはカスタマイズ出来るよう「見やすさ設定パネル」を作成。背景と文字の組み合わせは色覚特性のある方々に対応し、7種類の組み合わせ、フォントはPC、ブラウザーの ユーザー設定を考慮して尚、対応できないであろう弱視の方の利用を想定。4種類の大きさを選択出来るように設定した。 この設定にはJAVA SCRIPTを使用。誰でもがカットアンドペーストでHTMLを利用出来るよう、公開している。ブラウザーのバージョン毎の動作実験は済み。また、このパネルが利用しやすいよう、インストラクションを付けた。 ・改行への配慮 文字が大きくなった場合、言葉の途中で改行されると文意が伝わりにくくなる。こまめに改行するタグとしないタグを書き込み、配慮した。この際、参考にしたのは点字の「分かち書き」の考え方。 ・読み仮名とリーダーとの調和 知的障害の方々へのアクセスをしやすくするため、ほとんどの文章に読み仮名を振った。この際、ブラウザーは文字上のルビは表現しないため括弧書きで読み仮名を振る。 しかし、これだとHPリーダーを利用する人たちには同じ言葉を二度読みする事になるので、全ての括弧括りに <script language="JavaScript"><!-- document.writeln(' :読みがなをくくるかっこ。リーダーでは飛ばして読まれる。) ');//--></script> :読みがなをくくるかっことじ を書き込んである。 以上の様な細かな工夫を通じて、誰もがストレス無くアクセス出来、何の疑問も持たないHPこそ最上のものだと考えている。 また、使用する方々のPCは最新鋭ではない事が多々あるので、ページ一枚は出来るだけ軽く作成。通信上のバリアを出来るだけ感じないよう考慮した。 さらに、パーソナルアイチェッカーで最後に走査をおこなった。 5.ユニバーサルデザインは全てではない 例えば、私たちのHPでは背景の設定をしやすいよう初期の背景を無地にしているが、デザイン性という側面では問題が残っている。 デザイン重視のページと見やすさ設定をカスタマイズ出来れば、より望ましい。 また、通信環境が整えば、より重いファイル、動画・音楽ファイルなどにも対応が迫られこの際のアクセシビリテイのあり方が問われてくる。 今回のHPはひとつの試みに過ぎず、アクセシビリテイへのアプローチをさらに広げたい。 |