丸山才一の本です。
いま読んでいる部分だけ紹介しておきます。かなり辛口
(下記の文章にうつる前に、日本語が鴎外や漱石などの和漢洋をこなした努力財産の上に成り立っていて、外来語のカタカナ表記もさかのぼれば漢字の支流だし、「社会」「文明」「神経」など西洋の概念を漢字で巧みに訳語をつくったし、とメリット・デメリットを紹介しています)
ジャレド・ダイアモンドという人の書いた「銃・病原菌・鉄」(草思社)という本がある。 その中にはこういう一節がある。 「1947年にアメリカ東部のベル研究所で発明されたトランジスタ技術は、8000マイル(1万2800キロメートル)を旅し、日本で電子機器産業を開花させた。しかし、日本よりもっと近くに位置するザイールやパラグアイに旅して、電子機器産業を興すことはなかった。(中略)ザイールやパラグアイと違って、日本をはじめとする国々がトランジスタ技術を素早く利用できたのは、それが文字を読み書きできる人々の国だったからである」
日本人が日本語を使って、外国の最先端の情報を得て、それを産業に結びつけて成功できたのは、それができるレベルの日本語があったからで、その事実を文部省も日教組も正しく認識しているだろうかと著者は強く指摘して書きます。
文部省は、日本語を使ってものを考え、ものを言い、ものを書く術を教えることは、国語教育だけではなく、あらゆる教育の基礎なんだということをきちんと認識していなかった。日本語教育をしっかりやらないと理科系の教育だってできないのである。そう述べています。
さらに悪いことにはテレビと携帯電話の普及で、文章を読んで正しく理解できたり、自分の考えを書くという能力が衰えてきた。 昔の子どもは、小さいうちから文字だけの文章を読み取る能力を自分で養ってきたわけですが、テレビや携帯電話は映像や音声という文字情報をはるかに上回る大量情報を送り込んでくるから、それに流されると文章の読み書き能力がどんどん低下するわけです。
今まで文部省と日教組は 国家と国旗という些末事で争うこと。 日本語教育を疎かにすることで同調すること。 ゆとり教育という重大な失敗で同調すること。 この三点において長い間共犯関係にあった。この共犯関係は即刻やめてもらいたい。
テレビや携帯電話の氾濫で、日本語は乱れるし、若い人の日本語能力はどんどん落ちていますから 一層国語教育が大切になってくるのですが、文部科学省の国語教育に対する考え方が問題だと著者は指摘するのです。
|