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[No.14983] インターネット・セラピーへの招待 投稿者:男爵  投稿日:2010/03/27(Sat) 08:11
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著者田村毅は精神科医で大学教員でもある。

私の考える「◎○セラピー」とは
ムンクが絵を描くことで心の悩みから逃れたとか
会社の帰りに居酒屋で一杯飲んでストレス解消するアルコール・セラピー
など自分で行うストレス解消法なのですが
以下に紹介するのは、この著者が行っている電子メールによる
クライエントに行うカウンセリングのことです。

まずインターネットの利点が述べられます。
・直接医師の所まで行って面談して心の悩みを相談するより、電子メールのほうが楽である。
    「メールなら書ける言葉が、言い出せず」
・簡便性 いつでも都合のよい時、都合のよい場所から利用できる。
・匿名性とプライバシー 新聞や雑誌などで相談する方法がいまも残っているのは、この理由でしょう。
・日常生活との乖離 通常の世界で人が人と会うとき、そこに関係性が生じる。上下関係、年齢や性別や身分、それらの影響を受けず自由な状態でカウンセリングを受けられるのは望ましいことである。
・自己開示の容易さ 以上の理由からインターネットでは、自分の気持ちが素直に語りやすい。

もちろん、インターネットは良いことばかりではなく、問題もたくさんある。
それは後ほど述べましょう。

インターネット・セラピーの特徴
・書き言葉であること 考えながら書くので頭を使う。記録が残るからあとで考える資料になる。
・気持ちを表現すること あいまいに書いたり、明確に書いたり、感情をこめたり色々表現ができ、そのことが治療にもなる。
・キーボードで表現すること 読みやすい。 手書きなら感情にとらわれ文字も乱れることがあるが、そういうことがなく読みやすい文字が送られる。
・孤独であるということ 面談による気遣いがない。
・インターネットの治療関係 通常の面談では、セラピストとクライエントの間に転移感情が生じるが、顔の見えないインターネットでは転移感情が起きにくい。
   相談内容にもよるが、クライエントにとって自分の弱みをさらけ出す事が少なく、プライバシーが守られるという安全性がある。

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北杜夫の兄の精神科医も述べていたが、彼らの母親は非常にユニークな人で、非常の人と彼らは言っていたが、自分の気持ちをストレートに出す女で、その時の相手に対する配慮が全然ないワガママ人間であった(金持ちの娘という生い立ちもあったろう)。
そのため息子たちも嫁たちもたくさん傷つけられたのであったが、長男の精神科医は保身のためもあり、自分のストレス解消法として、モーレツ母親の言ったことしたことを記録しておいたという。そして自分のコメントも(率直な気持ち)。そういう書くということがストレス解消になり、あとで自分たちの行動の正当性の証拠にもなったようである。まさに日記セラピーといえるだろう。

インターネットは顔の見えない相手が向こうにいるので、相手が正しいことを書いていないかもしれない。
つまり、クライアントが正しく状況を報告していないかもしれないし、場合によっては「なりすまし」て、悩める女子高生の相談と思っていたら、実はおじさんの創作だったということもありえそう。

それから、いわゆるフレームなどのように、クライエントがセラピストに対して、誤解や不信感をもつこともありえる。なにしろ文字情報しかないのだから。

かつて、私は文部省主催の国立大学・高専の教職員対象の「学生のメンタルヘルス研修会」なるものに参加したことがあった。
要するに、大学や高専において学生が諸々の問題を抱えているとき、どうやって彼らに向かい合うべきかということのノウハウを専門家の講演を聞いたり、討論会で情報交換をしたのである。
 そのとき、京都の大学の学生相談室のカウンセラーの先生が、日常業務としての学生相談の話をしていたが、私が今どきの学生は電子メールが得意なのもいるから、面談だけでなく、電子メールによる相談もあってはよいのではないかと言ったら、その先生は「確かに学生によっては、面談よりも電子メールによる相談を好む学生もいるから、学生によって面談をしたり、電子メールによる相談をしたりと、使い分けをしている」と答えていた。
 それから、よけいな発言「大学では昇格には論文何編の世界で、学生相談にあけくれると論文を書く暇もないであろうから、たとえば学生センターのカウンセラー1年間という経験を論文1編に置き換えるという学内措置も必要ではないか」をしたら、この先生はよく言ってくれたとにっこり笑った。