ブルーバックス B-793
心臓病のもとになる動脈硬化は、カルシウムが血管の細胞にたまり、血管の弾力が失われて生じる。 また、腎結石のように体にたまる石も、カルシウムが固まったものである。 では、カルシウムをあまりたくさん摂らないほうがよいのではないかと思うと、カルシウムが骨に不足してくると大変ことになります。
イギリスのシドニー・リンガーという生理学者は、カルシウムの含有量の多いロンドンの水道水を使って、カエルの心臓の実験をしていた。食塩を血液中にあるのと同じくらい水道水に加えて、その中にカエルの心臓を入れると規則正しく収縮していたので、心臓の収縮には食塩の適量があれば十分と彼は考えた。 ある日、きれいな実験をしようと思って、蒸留水を使って同じように食塩を溶かして、カエルの心臓を入れたら、なんと止まってしまった。 そこでロンドンの水道水にカエルの心臓を動かすのに必要なものがあるに違いないと分析した結果、カルシウムが心臓の収縮に必要なことを発見したのである。 これよりリンガーは、食塩水にカルシウムを加えて、リンガー液(リンゲル液)として広く応用される溶液を作った。(リンゲル液だからドイツ人の発明かと思っていました。点滴に使いますね)
あまりにもカルシウムのことを知りすぎた医師の本なので、かえってわかりにくく 私の理解したことだけ書けば次のようになります。 骨には99パーセントのカルシウムが含まれていて、あとの1パーセントが血管とか全身の細胞に含まれている。ところがホルモンとかビタミンの働きで、骨におさまるべきカルシウムが血管に流れ出したりすると動脈硬化をひきおこすし、結石のもとにもなる。そして、肝心の骨のほうはカルシウム不足で、骨粗しょう症となってしまう。 食物からカルシウムをとっても体の調子ではカルシウムが骨に蓄えられにくい人もいる。 運動不足の人はカルシウムをとっても身になりにくい。やせた人もカルシウムが身につかない(無理なダイエットをしている若い女性は年をとると骨の痛みに苦しむ)。
カルシウムを十分に吸収し、また体内に保存するためには、リン酸やナトリウム、たんぱく質をあまり摂りすぎないことが望ましい。牛乳だけを大量に飲むことは、たんぱく質の摂取量を非常に多くすることからも問題である。このために、実際にカルシウムを十分摂るには、いろいろな食物から少しずつ摂って、総合的に行い、ひとつの食物だけに頼らないことが大切である。
五木寛之のいうように、なんでも食べることがよいので、○○健康法というような特定のものだけ食べるのやめたほうがよいだろう。
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