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[No.15186] 感動のひと時 投稿者:   投稿日:2010/05/03(Mon) 19:43
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あっしは昔から涙もろいので、お涙頂戴式の映画は一切みないことにしていたが、折角の大連休。きょうは珍しく居間で、こないだ買って来たばかりのDVDを観ることにきめた。

 題は「息子の部屋」。監督はナンニ・モレッティである。主役をはじめ製作、原案、脚本のいずれにも彼の名が出て来る。

 ジョヴァンニは、妻と子供ふたりのごく普通のイタリアの家庭で、精神分析医の仕事をしている。仕事場にしている自宅には患者も多く、仕事は一見うまくいっていて、はたからは仕合せそうな家族に見える。

 ある日、愛する長男が学校の友だちと海へ出かけ、潜水中に事故に遇い、病院に収容されたが、薬石効なく、家族と言葉をかわすことなくついにそこで息を引き取った。最愛の息子と再び会える楽しみは完全に絶たれた。ジョヴァンニは最初の内は冷静に診療に打ち込んでいたが、その悲しみは、いつまでも彼の身の周りにしつこく付きまといいつかな離れようとはしなかった。ほかのことに気を紛らせようとする努力もすべて水泡に帰した。さしも冷静だった精神分析医も、ついには冷静さを失い、いつしか家で荒れる日も増えてきた。

 そうした悲しい日々が幾日か続いたが、そうこうする内、外出先から帰宅した妻のパオラは自宅の郵便受けに、アリアンナという未知の少女からの手紙を発見する。そこにはアンドレーアの部屋が見たいとも書いてあった。この子のことは家族は誰ひとり知らないことだったが、彼女は実は息子アンドレーアの女友だちだったのだ。パオラの留守中、ジョヴァンニはそのアリアンナの訪問を受ける。

 彼女は実はいま男友達のステーファノと一緒にフランスを目指し、ヒッチハイクの途中だと告げる。そのステーファノも良さそうな子で、ジョヴァンニ夫妻もほっとひと安心する。はじめは、連中をちょっとそこまで送るつもりだったが、同乗のお客は歩き疲れたのか、車の後部座席で仲良く眠りこんでしまう。

 ジョヴァンニはかれらを起こすのが可哀想だとそのまま運転を続け、いつの間にかフランス国境に着いてしまう。娘のイレーネはバスケの選手で、きょうの試合に間に合わないと大慌て。連中との名残りは惜しいが、ジョヴァンニ一家はここで若いふたりに別れを告げることになる。

 これで何もかもすっかり解決したと云うわけではないが、アリアンナに出会ったことで、一家のアンドレーアの死による喪失感や深い苦しみは、幾分か和らいで来たような感じだ。

 あっしは、これを観終わって、久しぶりに快い涙をながし、別れと再生を体験することができた。

 バックに流れるスローテンポの、ブライアン・イーノのテーマ曲「バイ・ディス・リバー」も、こころの痛みを優しく洗い流してくれる、美しい曲だ。

  同上の映画は、2001年度カンヌ映画祭パルム・ドール賞を受賞している。