エッセイ集 山村美紗の事件簿
無視される「知的所有権」 作者の「京都○○殺人事件」というのが売れたとなると 二字違いの題名の作品が出たり、トリックもどんどん盗用される。 テレビドラマでも「京都鞍馬殺人事件」とか「京都茶道家元殺人事件」が高視聴率をとると 「京都鞍馬殺人街道」というまぎらわしいのが作られる。
行きつけの料理店やスナックが店のことをちょっと書いてほしいといい、書くと、それが宣伝パンフレットやJRの車内詩に使われ、原稿料はもらえない。 ほかのもっとえらい社長さんにも、タダで書いてもらいましたからといわれるが、 社長さんと著者のような文筆業で生活しているものとは違う。 弁護士も知り合いから、「ちょっと相談にのってください」といわれて苦い経験をしているのではないか。
おふくろの味消え........浮気、離婚 テレビで「私の新婚の妻は、食事を作らずレトルト食品しか食卓に出ない。ワイシャツのボタン付けを頼んだら、リサイクルショップに出すというので困っている」という夫の身の上相談があった。 これは特殊な例だと思ったら、そうではない。 娘の友達の中には、包丁が家にないという人もいるし、今度うちにきたお手伝いさんも、夜の食事はほとんどスーパーの出来上がった食品なので、ゴミの日には、発泡スチロールの容器しか出さない、生ゴミなんてほとんどないとけろっと言う。 著者のように、ぬか漬けや梅干しまで漬けている年代のものには考えられないことだが、世の中変わってきたのだと思う。 今の子供は、女も男も小さい時から受験勉強に追われて、大学は親元を離れて一人で生活したり、勤めると外で食事をしたりスーパーで買い物をして、料理を教わったり、作るチャンスがないのかもしれない。 男のほうがそれでいいのならいいけど、男のほうでやはり朝のお味噌汁やおふくろの味を結婚生活に求めているらしい。 となると、浮気や離婚が増え、作者の推理小説の動機も生まれてくるのだ。
サマータイムは辛いのでは 日本でもサマータイムが導入されるかもしれないという。 著者は終戦後の四年間実施されたときのサマータイムを思い出した。 そのころは食糧難で、日本人全体が栄養失調状態で、エネルギーもなかったからレジャーどころでなく、著者も学校へ行くため朝一時間早く起きるのが辛くてたまらなかったことだけ覚えている。 いまは経済も成長しているから,日のあるうちに会社が終われば、レジャーもできるし、時期的にもいいという意見らしい。 レジャーが増え、会社帰りのOLが買い物をするようになったら、消費も活発になり、日本経済の活性化のためにいいというけれど、はたしてそうなのだろうか。 最近は夜遅くまでテレビを見ている家庭が多くて、みんな寝不足がちだという。それでいて朝一時間早く起きるのはやはり辛いことではないだろうか。
マナー悪い海外での日本人 グアム島に旅行した時、帰りは午前二時半から五時まで空港で待たされたが、冷房がとめていて暑くて死にそうだった。 広い空港ロビーの中に、数台だけ扇風機があり、その一つの前には椅子があって、人々が涼をとるのにひしめいている。著者もそこへ行ったが、一番いい場所に日本人の未成年とも見えるアベックがいて、椅子をいくつも占領して荷物を置いている。みんな小声でのけてほしいようにいい、二人にも聞こえているのにのけようとはしない。 若者だけでなく、日本人の大人のマナーも悪い。そのロビーでは時々発着時のアナウンスをするのだが、どういうわけか、英語のアナウンスは声が通るのに、日本語のは小さくて聞きとりにくい。大方が日本人旅行者なので、みんな必死で耳を傾けているのに、子供二人もさわぎ、大はしゃぎしている親がいた。こういう人は、海外に行ってもらいたくない。
脚本家のモラルについて 西村京太郎のある作品が映画化されることになった。 知り合いの監督が、この作品に惚れ込み、いつか映画化したいと、ここ四、五年ずっと言い続けてきた。 そして、やっとスポンサーが見つかり映画化が決まったと知らせてきた。 彼はそのためヨーロッパにも行き、いきいきと取り組んでいた。来年の2月にロケが始まるころまでいって 突然監督を解任されたといってきた。 監督は何も言わなかったので、著者は西村氏と一緒にプロデューサーに話を聞き、脚本を見せてもらったのだが、あきれてしまった。 原作者の名前はどこにもなく、脚本家の作品になっているのである。 題を変え登場人物の名前だけを変え、参考文献をずらり並べたところに、西村京太郎の名前があった、原作は参考文献の一つにしかなっていないのである。 ところが脚本を読んで見ると、ほとんど原作のままで、作者がフィクションで作り上げた何人もの人物から、結末まで同じである。 これは完全な盗作なのだが、彼にはわかっていないらしい。この脚本家がスポンサーを見つけてきたということで、映画を作るのなら自分の作品にしたいと思ったのだろう。 脚本家に連絡をとりたいと思ったが捕まらず、電話で脚本家の奥さんと話したのだが、「そんなこと、映画界では常識でしょう」とうう。これに反対した監督を切ったということがわかった。 ジェームス三木のように、原作は山岡荘八と書き、脚本家として原作をよりテレビ的におもしろく脚色するのが才能ある脚本家だと思う。
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サマータイム 私も小さいころ体験しました。 あれは北海道より北の樺太とかそれ以北なら妥当なのだが 日本では環境として不適切ではないかと思う。
ドイツは北の国 夏なら朝は4時ころから明るくてブラインドを下ろさないと眠られない。 夜も9時に夕焼け、それから散歩したりビールを飲んで家に帰るとちょうど暗くなってよろしい(それでも夏時間として一時間時計を進めている)。 反対に冬は午後3時になったら暗くなる。朝は9時にならないと夜が明けない。 そういう世界で必要に迫られて作られた人工時間帯なので、日本人にはこの日本列島では体質的にあわないと思う。 日本では太陽がそういう風に動いてくれないのだから、省エネになったり経済が活性化するかどうか疑問である。
脚本の盗作かオリジナルか これは学者の研究や商品開発でも、同じようなことがいつもどこかで起きている。 作曲にしても絵画にしても。完全にオリジナル、全然ほかの人の作品の影響を受けていないというものも珍しいと思うが。 それにしても、すっかり物真似はいただけない。隣の国の万博においても。
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