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[No.15315] 言語は色眼鏡である 投稿者:男爵  投稿日:2010/06/06(Sun) 05:58
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さいきん
大学の図書館で高校の教科書を借りています。
高校の理科教育の内容が知りたくて
理科全般について教科書をあれこれ借りていましたが
ついでに国語の教科書もと欲が出て
国語総合なる教科書を借りてきました。
この教科書は
現代文の他に、古文や漢文も扱っているから
国語総合らしいのです。

野元菊雄の「言語は色眼鏡である」という文章の中で
日本語は単数と複数の区別は普通しないが、英語だと単数と複数の区別はする
のが常識なので
イギリスの新聞で泥棒の記事が載っている場合
よく警察当局は the thief or thieves を捜査している、と書いてあるそう
です。
捕らえてみなければわからないような時は、どうも英語ではこう書かなければ
ならないようです。
これは日本人からすれば、英語って理屈っぽくて不便だなあと思いますね。

ところが、これがフランス語だとどうでしょうか。
フランスでは男の泥棒 le voleur と女の泥棒 la voleuse との区別があり
ます。
そうするとフランス語で正確に言おうとすると「男の泥棒または女の泥棒たち
または女の泥棒または女の泥棒たち」と書かなければならないのでしょうか。
この著者はフランスの新聞を読んだことがないから
このありそうにもない冗談を言うそうです。

実際にはフランスの新聞では
男の泥棒あるいは男の泥棒たち と書くのでしょうか。
ドイツではどうかと言われても、私のドイツ語の力ではそれはわかりません。
 ドイツ語の先生に聞いてみましょう。

フランスの新聞ではどう書いているのでしょうね。


[No.15316] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:   投稿日:2010/06/06(Sun) 08:20
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男爵さん、みなさん、お早うございます。(^_-)-☆

> 実際にはフランスの新聞では
> 男の泥棒あるいは男の泥棒たち と書くのでしょうか。
> ドイツではどうかと言われても、私のドイツ語の力ではそれはわかりません。
>  ドイツ語の先生に聞いてみましょう。
> フランスの新聞ではどう書いているのでしょうね。

あっしも詳しくは知りません。実際にフランス語をやったのはかなりの昔だし、いまNHKの講座を視聴しているわけでもありません。紫竹のさんが前書いていたようにテキストはどんどん溜まって行ったとしても、それを広げたことはマッタクありません。(-_-;)さて、

 ドロボーはたしかに仰るとおり男はvoleur、女はvoleuseですね。ただ辞書を見ると、ドロボーだ!、というときはAu voleur!と男性形。子供誘拐犯もvoleur  d'enfant、すりも、voleur a la tire追いはぎも、こそ泥もみんな男性形。

 フレーズになっても、手癖が悪いは、etre voleur comme une pieでやっぱり男性形。これなど、pieはカササギの意味ですから、カササギが男性かと云うと、あにはからんや、女性形なのです。

 ちなみに、この句は直訳では「カササギのように手癖が悪い」というのだそうです。

 で、あっしが思いますには、まず基本的には男性形で表し、構成メンバーが分かってから書き分けるのではないかと。

 かりに目撃者があり、ドロボーが100%近く女だと分かっていれば、女性形にするのでは。

 これは面白い例だと思うのですが、むかしフランス映画で「小さな泥棒」というのがあったようです。この題名が英訳では、The little Thiefこれでは男女の別が分かりません。原題ではLa Petite Voleuseなのです。あっしは追跡しました。つまり、女性形である以上、これはドロボー自身が女でなければオカシイと思ったのです。予想通り、主人公は16歳の女の子でした。やはり、分かっているときは男女のいずれかで表し、不明の場合は一応男性形にしておくのではないでしょうか。
 
  とりあえず、こんなところで、どうでしょうか。     


[No.15317] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:男爵  投稿日:2010/06/06(Sun) 09:00
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唐辛子 紋次郎さん

早速の返事をありがとうございます。
メルシー ボク といいたいところです。

>  ドロボーはたしかに仰るとおり男はvoleur、女はvoleuseですね。ただ辞書を見ると、ドロボーだ!、というときはAu voleur!と男性形。子供誘拐犯もvoleur  d'enfant、すりも、voleur a la tire追いはぎも、こそ泥もみんな男性形。

>  で、あっしが思いますには、まず基本的には男性形で表し、構成メンバーが分かってから書き分けるのではないかと。
>
>  かりに目撃者があり、ドロボーが100%近く女だと分かっていれば、女性形にするのでは。

そうでしょうね。
一般的にそうなるのではないかと思いました。

>  これは面白い例だと思うのですが、むかしフランス映画で「小さな泥棒」というのがあったようです。この題名が英訳では、The little Thiefこれでは男女の別が分かりません。原題ではLa Petite Voleuseなのです。あっしは追跡しました。つまり、女性形である以上、これはドロボー自身が女でなければオカシイと思ったのです。予想通り、主人公は16歳の女の子でした。やはり、分かっているときは男女のいずれかで表し、不明の場合は一応男性形にしておくのではないでしょうか。

この例は
正しい表現をするということで
フランス語は英語の先をいくような印象でした。
しかし、言語はそれぞれ特徴があるので
どの言語が優れている、どの言語が劣るというものでもないと思います。

それぞれの言語を語る民族の政治・経済・文化の違いはあっても、その言語自身に上級下級の区別はない、とこの著者は言っています。

この文章の結論は
外国語を学ぶことは、母語と違ったもう一つの色眼鏡でこの世界を見る時、同じものを見てもまったく別に見えるということを知るにあるのである。
だから
外国語を学ぶことは、事故の幅を広げ、自分だけをよしとする態度を反省し、他の文化への寛容を学ぶことであるということのようです。

フランス語もイタリア語もスペイン語もわからないので
唐辛子 紋次郎 さんの語学力にはいつも感心いたしております。


[No.15318] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:   投稿日:2010/06/06(Sun) 09:15
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男爵さん、みなさん、補足です。

 男爵さんの引用例は、どうやら大修館書店の月刊誌「言語」★が、その239号で『二重言語生活』を特集したさい、野元氏が寄稿したのが出典のようですね。これが、後に中公新書で単行本になって出た。初出時は「言語は色眼鏡だ」となっていたものが、単行本になるさい「色眼鏡である」と変わった。それが三省堂の高校教科書「新編国語総合」に取り入れられた。

 このドロボーの話で、さっそくネットサーフィンすると、絵画窃盗事件が5月20日から21日にかけて、パリの16区にある市立近代美術館で起こっていました。アメリカのCBC電子版をみると、開館前の時間を狙ったもので、重要な作品5点(ピカソ、レジェー、マティス、ブラック、モディリアーニ)が盗難にあっていました。

数ヶ月前に警報装置に問題があったのに、館側ではなんら手当てをしていなかった。で、当然警報装置は機能しなかった。犯人は窓ガラスを破って侵入、その姿は監視カメラにキャッチされていましたが、男か女かまでは分からない。

 たしかに、CBCnewsつまり、英語では、The thief or thieves となっていますね。

 そこで、大元の『パリジャン』紙をみると、何者かが侵入としてあり、フランス語ではune personneとなっていました。意味は辞書では人、または人間、です。まあ、英語のpersonですかね。これなら、男にも女にも通用します。女が、とか、男がとかは、書いていませんでした。

また、面白いことを思い出しました。フランス語でgarconガルソンといえば、男の子ですが、この女性形があるのです。

 ドイツ語や、英語にはこれはまず、ないと思います。garconneガルソンヌを辞書で引くと、もちろん女性形で、自立して自由奔放に生きる男のような娘、とあります。1920年頃にできた新語だと思います。

 ☆ ふつうは、ガルソンの反対語はfilleフィーユで、女の子です。

 * ガルソン、ガルソンヌのCには本当は、下にヒゲのようなもの(セディーユ)と呼びます)がついていますが、ここでは英語式にCと書きました。

 ★ 月刊誌「言語」は、38年も続いたのに、2009年12月号を最後に休刊になってしまった。誠に残念なことです。(-_-;)
Kazuo<YHM00217@nifty.com>


[No.15320] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:   投稿日:2010/06/06(Sun) 10:12
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男爵さん、みなさん、補足の補足です。

先日読んだ、I氏の文章は興味深かった。むかしフルブライト基金だか、ロックフェラー基金のお金でアメリカへ留学した連中は、口が裂けてもアメリカを悪く言わない、などと云う話を聞いた。

 都知事が云うんならまだ分かるが、人もあろうに、日夜学生におフランス語を講じる先生が、フランス語の欠点をあげつらうというか、フランス語の明晰性に疑問を投げかけ、あれこれ検討している文章にぶつかった時『あんたはエライ』とつくづく感心した。

 明晰性と云うのは、氏によれば、フランス人の独りよがりだというのである。これはフランス語に通じた外国人にして始めて言えることである。

 ふつうは何十年もフランス語を講じ、それでメシを食っていれば、口が曲がってもその言語を貶めるような?ことはいわない。

 たしかに明晰性を重んじるあまり、いきおい表現が長ったらしくなったり、まわりくどくなるのは避けられないのではないか。

 英語では、彼の帽子はhis hat、 彼女の帽子はher hatで、まず間違いようがない。ところがフランス語になると、両方ともson chapeau。これでは現場に帽子を被った男女がいたばあい、どちらの帽子かとっさには判断できない。

 英語では盗難はtheft,飛行はflightとはっきりしているが、フランス語のvolは時にはflightの意味になり、時にはtheftの意味にもなる厄介紋である。ピンクレディーではないが、ある時謎の運転手、ある時アラブの大富豪では、初心者は困るのだ。
(-_-;)

 試みに怨羅院辞書で、theftをいれ、つづいてflightをいれてみて頂きたい。両方ともvolと出るはずである。 


[No.15322] フルブライト奨学生の小田実 投稿者:男爵  投稿日:2010/06/07(Mon) 05:04
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唐辛子 紋次郎さん、みなさん、おはようございます。

> 先日読んだ、I氏の文章は興味深かった。むかしフルブライト基金だか、ロックフェラー基金のお金でアメリカへ留学した連中は、口が裂けてもアメリカを悪く言わない、などと云う話を聞いた。

たとえば
小田実ですが
多くの人に影響を与えたという「何でも見てやろう」の中で
フルブライト奨学生に採用され渡米、 アメリカ留学の後、欧州や 中近東、アジアを旅行して日本に戻ってきたことを書いています。
そして、「 ベトナムに平和を! 市民連合」(ベ平連)を結成。
アメリカと対決しました。彼らの運動はアメリカに大きな影響を与えました。

彼の行動をどう評価するかは
歴史家によってさまざまでしょうね。
これを読んでいるみなさんにしても、評価は一律ではないと思いますが。


[No.15372] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:男爵  投稿日:2010/06/17(Thu) 17:35
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もう この話題はお忘れのようですね。 きっと

> イギリスの新聞で泥棒の記事が載っている場合
> よく警察当局は the thief or thieves を捜査している、と書いてあるそう
> です。

> ところが、これがフランス語だとどうでしょうか。
> フランスでは男の泥棒 le voleur と女の泥棒 la voleuse との区別があり
> ます。
> そうするとフランス語で正確に言おうとすると「男の泥棒または女の泥棒たち
> または女の泥棒または女の泥棒たち」と書かなければならないのでしょうか。

> ドイツではどうかと言われても、私のドイツ語の力ではそれはわかりません。
>  ドイツ語の先生に聞いてみましょう。

知り合いのドイツ語の先生に聞いたら
返事をいただきました。
 # 泥棒の場合、一人の泥棒が押し入った、となると
 # とくに男女の別なくDieb男性名詞を使います。
 # 女泥棒だと分かれば、Diebinにします。

 # 泥棒たちの場合は、Diebの複数形を使います。

 # 翻訳する場合は、それぞれの訳者のセンスで
 # いろいろと書けると思います。
 # 一団の泥棒が、中に女も含まれているもよう、etc.
 # などで対応できます。ドイツ語も、分かっている場合に
 # のみDiebinを使います。

というわけで
ドイツ語でも通常は男性名詞を使うそうです。
これが、はっきり女の泥棒だとわかった場合は、女性名詞を使う。
やはり、ある程度は原則的に男性名詞で対応して
女性だと確認できたときには(しかたないから)女性名詞を使う
ということになるようです。


[No.15373] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:   投稿日:2010/06/17(Thu) 19:12
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  Guten Abend、男爵さんund みなさん。(^_-)-☆

> 知り合いのドイツ語の先生に聞いたら
> 返事をいただきました。
>  # 泥棒の場合、一人の泥棒が押し入った、となると
>  # とくに男女の別なくDieb男性名詞を使います。
>  # 女泥棒だと分かれば、Diebinにします。
>
>  # 泥棒たちの場合は、Diebの複数形を使います。
>
>  # 翻訳する場合は、それぞれの訳者のセンスで
>  # いろいろと書けると思います。
>  # 一団の泥棒が、中に女も含まれているもよう、etc.
>  # などで対応できます。ドイツ語も、分かっている場合に
>  # のみDiebinを使います。
>
> というわけで
> ドイツ語でも通常は男性名詞を使うそうです。
> これが、はっきり女の泥棒だとわかった場合は、女性名詞を使う。
> やはり、ある程度は原則的に男性名詞で対応して
> 女性だと確認できたときには(しかたないから)女性名詞を使う
> ということになるようです。

男爵さんもさすが「言霊のさきあふ国」の住民だけあって、言葉を掘り下げて考えるのがお好きなようですね。(^_-)-☆ガイジンは言葉は単なる道具で、魂など宿ってはおらぬと切り捨てますが、日本人は言葉を大事にします。これはきっといいことなんでしょうね。

 いまある翻訳ソフトで、泥棒と入れたら、Dieb、つぎに「おんなの泥棒」と入れたらThief Madchenと出ました。どうして「おんなの」とつけただけでDiebがThiefになるのか、これは大紋題です。(^_-)-☆それから、奥さんの泥棒はドイツにはいなのか。

 そこでこんだは「大人の女」と入れてみました。さあ、どんなんが出たとお思いですか?Erwachsene Frauenこんなスゴイのが出ました。もっとも、このフレーズにマウスをあてると、『翻訳をカイゼンする』というのも一緒に出ました。(-_-;)「奥さん」では、期待通りFrauが出ます。

 またdie DiebinでもDiebinでもやっぱり「泥棒」です。ずいぶん大雑把だと思いますが…。der DiebでもただのDiebでも「泥棒」でした。

「大泥棒」はMeisterdieb、やっぱドイツはマイスターの国なんすね。靴直しのマイスター、歌のマイスター、などいろいろ。時に「ニュールンベルクのマイスタージンガー」ではないけれど、日本のマイスター、小澤征爾さんは大丈夫なんすかねえ。公演をしばらく休むとか。心配ですねえ。(-_-;)

 ところで、ドイツ語に限らず、ヨーロッパの言語の普通名詞が、基本的に男性名詞で表されるのは、男性優位社会の時代の名残りでしょうかね。

 しかしあっしなら途中で止めてしまう、どんな紋題でも、とことん極める姿勢というのはあっしらいい加減を旨とする有象無象のぜひとも学ぶべき点ですよね。←キッパリ。学者は違う。

 長くなりました。またその内に。 でわでわ。


[No.15374] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:男爵  投稿日:2010/06/17(Thu) 22:12
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唐辛子 紋次郎 さん

おっしゃるとおり
ドイツ語でも
たとえば泥棒という言葉に男性名詞と女性名詞があっても
通常は男性名詞を代表して使うそうです。

>  そこでこんだは「大人の女」と入れてみました。さあ、どんなんが出たとお思いですか?Erwachsene Frauenこんなスゴイのが出ました。

このErwachsene(大人)という言葉で現地で体験的に覚えました。
この言葉を学校では習わなかったので。
映画館やバスで、大人料金と子ども料金があったら
大人という意味で Erwachseneを使うのでした。

ほかにもいくつか
学校では習わなかったのに
日常ではよく出てくる言葉があり
それは苦労したものです。 汗をかき恥をかき覚える会話


[No.15376] Re: 言語は色眼鏡である 投稿者:   投稿日:2010/06/17(Thu) 23:27
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  男爵さん、みなさん、

> このErwachsene(大人)という言葉で現地で体験的に覚えました。
> この言葉を学校では習わなかったので。
> 映画館やバスで、大人料金と子ども料金があったら
> 大人という意味で Erwachseneを使うのでした。
> ほかにもいくつか
> 学校では習わなかったのに
> 日常ではよく出てくる言葉があり
> それは苦労したものです。 汗をかき恥をかき覚える会話

鴎外のような恵まれたひとは、留学前にいまの駅前留学式の会話だけでなく、本格的な語学をやれた。でも、それは普通の家庭では無理です。

 会話だけなら、帰国子女などの方がずっと上手です。しかし、会話など慣れれば、だれでもある程度は出来るのでは?しかし、帰国子女に会話は出来ても、ノーベル賞はとれませんね。要はコンテンツがあるかないかです。

 彼ら、彼女らは英語は出来ても、日本語が出来ない。これは日本人として致命的な欠陥です。(もちろん、そうでない人の方が多いのでしょうが)

 ひとの国の言葉が出来ないのは当たり前の話です。片言が喋れれば上等ですよ。かりにドイツならドイツ人の級友にただ一言「わたしはあなたの国の言葉はどうも上手くしゃべれない。これは認める。じゃあ、こんどは君にひとつ、こちらの言葉で話して貰いたい」といえばいいのです。

 かれらの知っている言葉はたぶん「こんにちは」「さようなら」「ありがとう」の三つが精一杯でしょう。そこで、胸を張って「君の日本語も大したことはないね。ぼくのドイツ語とどっこいどっこいだね」といってやればいいのです。(^_-)-☆

 あっしはイタリアなどではよく向こうのひとに「君はどのくらい日本語を知っているかい?」とよく聞いたものです。こたえは、いつも上の通りでした。