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[No.15710] 林幸雄:噂の広がり方 投稿者:男爵  投稿日:2010/09/05(Sun) 19:54
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ブータン国王から石坂浩二まで何人でつながるか。
知人関係をたぐって何人でたどり着けるかということを、2005年5月に某テレビ番組であつかったところ、13人の知人を介して到達したという。

実は
このような番組以前に似たような番組があって
そこでは、レポーターが偶然話しかけた稚内海岸のおばあちゃんから
司会者が指定した武庫川の中学生まで
何人の友人を紹介すればたどりつけるかということを追跡するものであった。
単に名前を知っている程度の人は友人には含めず、多少なりとも付き合いがある中から
最もターゲットに近づけそうな人を紹介するようにしていた。
 この場合、ターゲットは石坂浩二のような有名人ではなかった。
 樺太から夫とともに引き上げてきたが、息子や同世代の人々には先立たれたおばあちゃんからはじまって
 郵便配達人、その飲み友だち、秋田からの出稼ぎ工事の同僚、伊豆大島のスナックのママ、それから会社社長などが間に入って、尼崎の元消防員となって
 ターゲットの地域に徐々に近づいていった。

実際の噂の広がり方というものは
インターネット時代の今日では、電子メールやブログなどによることが多いので
あっという間に世界中に広がってしまう例もある。

噂の流れる量は、その内容の重要さとあいまいさに比例するという。

コンピュータウィルスが一晩中に世界に広がる例に比べると
歴史的な伝染病が世界中に広がるのは、ある程度時間がかかっていた。
しかし、交通の発展により、交易や戦争を通じて世界各地に広まっていった。
エジプトやエチオピアに近いペルジウムで発生したペストはイスラム世界に広がり中東の風土病のようになっていた。
それが三百年後の11世紀の十字軍の遠征でヨーロッパにペストが伝わった。

スペイン風邪も中国から米国に伝わり、米国から第一次世界大戦ヨーロッパに伝わり、そこから世界中に伝染していって二〜四千万人の死者を出した。
1957〜58年のアジア風邪は中国雲南省で発症してから三ヶ月後には東南アジアやオーストラリアに広がり、四、五ヶ月後にはアメリカ、その後にヨーロッパ、アフリカにまで拡大した。

交通機関の発達した現代では、外国からすぐ伝染病やウイルスが持ち込まれる可能性が高くなり、国内の伝染も迅速化されている。宮崎県の口蹄疫の例を見ても、対応は慎重の上にも慎重にしなくはならない。ウィルスの伝染は早く、その経路はまだ未知な点が多いから。

この本は、インターネットの情報伝達の拡大を扱うことが主な内容であるが
噂だけでなく必要な情報を、いかに早く獲得すべきかという観点からすれば
普段から有用な情報を広く集めている、いわゆるキーパーソン的な人間とのコミュニケーションが大切である。


[No.15716] 増田直紀:私たちは どうつながっているのか 投稿者:男爵  投稿日:2010/09/06(Mon) 13:11
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この本も
インターネット世界でのネットワークのことをあつかっているが
具体的な人間のつながりの例が多くあつかわれているのでわかりやすい。

啓蒙書としては、先に上げた本より、こちらのほうがすぐれていると思われる。
たとえば、国と国との結びつきの度合いを反映した国際関係ネットワークの図が示され、そこには同盟を結んでいる二つの国は枝で結ばれている。
別の例では、食物ネットワーク、つまり食うと食われる関係を表す食物連鎖の図も示している。
航空網や道路網や鉄道の路線図なども、身近なネットワークの例である。

仕事で行き詰まったとき、上司や同僚と話せば、相応の専門的な助言が期待できる。
ところが、全然仕事とは関係ない人と話してみたら、よりすっきりしたり、思いがけない視点が得られることがある。
江戸時代の日本は鎖国をしていて、海外に開かれていた出島や朝鮮通信使からの情報だけでは世界の情報が不足していたことからもわかるように、閉鎖的な社会では情報不足に陥りやすい。

自分の知人を見渡して同質な人ばかりなら、自分の周りのネットワークが情報の近道を欠いている可能性がある。
情報を求める気持ちや好奇心があるならば、外の風が入るように自分の周りを意識的に変えなければならない。
一番簡単な方法は、複数のコミュニティに属するよう意識することである。
いろいろな性格の異なる、違う目的のネットワークにつながるようにしておけば、いやでも情報は多く集まってくる。
もちろん、情報がたくさん入ってくると、よい情報だけでなく、不要な情報、デマ、悪影響、借金とか病気なども近寄ってくることがあるから、諸刃の剣であることを心に留めておこう。

人間社会はほおっておけば均等ではない。まず人はウマのあう人と一緒になりやすい。
人望の高い人や面白い人の周りには人が集まりやすい。人が集まると、その人の評価はさらに上がる。
個人が利益を求めると、自然に不均一なネットワークになってしまうものである。

ほおっておくと不平等が現れがちであることを考えると、ネットワークの仕組みから、ネットワークの中での位置どりについて何か教訓を得られないだろうか。
こうして、ネットワークのハブに相当する人物の役割に思い至る。
ハブの一挙一動は多数の人に注目されている。ハブは多数の枝を通じて情報を迅速に集めたり、多人数へと情報を発信したりすることによって何かの大きな活動を起こさせるかもしれない。
ハブとなるためには基準は三つある。まずは個人の能力である。冗談が面白い、頭の回転が速い、人に話しかけて友人になるのがうまい、外見が魅力的といった要素は、枝を獲得する際に有利である。
これらの才能でぬきんでていれば、ハブになれる可能性は大きくなる。自分を磨いたり、人間関係に多く時間を費やしたりすることによっても、枝獲得力をある程度高めることができるだろう。
個人の力が似たり寄ったりだと、枝を増やすためには、先住権のあるものが有利である。先にネットワークに入っていて、人より長い時間ネットワークに住んでいるほうがいい。最初のうちからネットワークにいる人は、ほかの人よりも後輩を多く持ち、後輩と枝を作るチャンスが多い。
ビジネスでも、他人よりも先に種を見つけることが肝心で、先を越されると挽回は難しくなる。最初に動いて足場をすばやく固めて定評を得ると、その後がやりやすい。
日常生活で知人とネットワークを結ぶときも、早いうちにある程度のハブとなってしまおう。そうすると、自分よりも対象高い能力を持つ人が後から来たとしても、すでに自分がつくった牙城を崩すことはかなり難しくなる。

友人関係も同じだ。ある小学生が転校したとする。新しい学校のクラスには、すでに人間関係ができている。ガキ大将や人気者、それをとりまく子たちなどがいる。やってきた転校生は、もしかしたら前の小学校のクラスではガキ大将であり、中心的存在になる素質があるかもしれない。時間がたてば、転校生はクラスに打ち解けるだろう。目立つ存在になってくるかもしれない。しかし、新しい学校では前の学校と同じ位置になれるとは限らない。新しいクラスにはすでに先住者がいて、人間関係があるからだ。

能力・先住権に勝るとも劣らないくらいハブになるための要素が運である。
能力・先住・運、この3要素があるとハブになりやすい。すべてが必要なわけではなく、これらの要因はそれぞれ人がハブになるときに貢献するのである。

知力・体力・時の運 これらは何をするにも大事なことである。

だが、ハブになったらなったで、ハブは大変である。
なにしろ他の人にくらべて多い人間関係を維持するのは大変なのだ。時間もつぎこまないといけないし、お金もかかるだろう。
たまにはメールの返事もする。一緒に飲みに行く。年賀状も書くなど連絡を保つことは必要だ。
一人一人との関係が薄まりすぎたハブは、いつも忙しそうで、話したいけど話しかけてはいけない人だと思われてしまいかねない。
うまく時間を使って、インターネットを活用して、社交術もさりげなく身につけてと、なかなか忙しい。 こういうことが好きで意欲がある人が向くのであろう。