1986年に出た本の翻訳書である。
著者はフレッド・ホイルとチャンドラ・ウイクラマシン フレッド・ホイルはケンブリッジ大学理論天文学研究所の元所長であり チャンドラ・ウイクラマシンジはスリランカ出身の天文学者でカーディフ大学教授である。
二人とも天文学者だが、ダーウィンの進化論に批判的で ダーウィンが進化論を発表したとき、ちょうどタイミングよく 恐竜と鳥類をつなぐ始祖鳥の化石が発見されたので、進化論が補強されたのであった。 当時、始祖鳥化石はドイツのバイエルン地方にのみ見つけられ その後は始祖鳥の化石はほとんど発見されず ロンドンやベルリンにある始祖鳥化石は偽物という説を唱える学者が現れた。
そういう点では、この本もその流れにあるのだが 著者らはもっとラジラルであって、ダーウィンの進化論そのものを否定している。 生物は徐々に進化するのではなく、突然新しい種が誕生するのであって 地球上では隕石によって他の星からウィルスが運ばれてきて そのウィルスによって新しい種が産まれるのであるという説を主張している。
もちろん この著者の説はまったくないわけではなく、隕石の中に蛋白質がふくまれている報告はあるようであるが 進化論を全面的に否定する考え方は現代の生物学でも受け入れられないであろう。 天文学の専門家が違う専門分野に口をつっこみ冷笑を浴びているという印象をうける。
珍しかった始祖鳥の化石も、その後世界各地で見つけられ 特に最近は中国で毎年のように羽のある爬虫類の化石、つまり中国の始祖鳥に相当する化石が発見され日本での展示が続いている。
むかし私が子どもの頃 八杉龍一の言葉を本で知った。 「鳥が先か卵が先か、という質問があるが、答は鳥が先である。 なぜなら鳥は爬虫類から生まれたから」 この八杉龍一は、当時から地球の生命は隕石によって他の天体から運ばれてきたという説を紹介して それはそれとしても、その星ではどうやって生命が誕生したのかを説明しないと、解答を他に転化しただけと、この説の欠点を指摘している。
この本に書かれてあることは全く否定するわけではないが 他の天体からきたウィルス説があったとしてもごく特殊なケースであり 地球上の大部分は進化論によって進化したのであろう。 現在の進化論に欠点があっても大筋は妥当なもので、細部について改良訂正がなされるであろう。
だいいちウィルスはそれだけでは生きていけないものなのである。 生きた生命体に寄生するようなものなのだから、ちゃんとした生命があるところでないと 生きていけないし、そもそもの発生はあり得ない。 ウィルスを培養するとき、有精卵の卵を使っている。
このような本が出版され大学の図書館にあるのは、科学者の自由性の確保になるのだろうが なんだかムダのような気がするのは私だけであろうか。 もう少し説得力のある資料を集めて出直してきたらという思いだった。
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