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[No.15851] 赤瀬川原平:老人力2 投稿者:男爵  投稿日:2010/10/02(Sat) 21:56
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老人力という言葉の提案者なので
インタビューを受けたり
あちこちの講演会に行って話したりする。

日本語の乱れが問題になっているこの頃
老人力という新語そのものが、乱れではないかという指摘はさておいて
定義した本人が首をかしげるような、老人力という言葉の乱れがあるという。

老人力というのを、いわゆる老人パワーというべきか、老人の持っている物理的なエネルギー量と考えて使っている例がある。
「まだまだ若いものにには負けませんよ」
「まだまだこのくらいの荷物は持てますよ」
「まだまだ徹夜は平気です」、
「まだまだ酒一升は飲めますよ」
こういう、まだまだではじまるいわゆる老人の単純な頑張り力に、老人力という言葉をあてている例である。
もちろん、年をとってもなお元気、筋骨リュウリュウ、欲望ギラギラというのは結構なことである。
しかし、そういう第一次産業的な力はいずれ衰えてくるもので
「いや衰えない」といって抵抗するかわりに
「これは衰えじゃなくて、力の変化なんだ」と考えるのが老人力で、それは第二次産業的な力というか、もしかしたら第三次産業かもしれないが、そんなようなニュアンスのことなのである。

みんな内心では、自分も体力気力が落ちた、物忘れもするようになった。こりゃ老人力がついたかもしれないと思っているが
いざ公式の場で口を開けると、老人力があるから階段もまだまだ昇れるし、このとおり元気ですと言いたくなるらしい。


[No.15854] Re: 赤瀬川原平:老人力2 投稿者:男爵  投稿日:2010/10/02(Sat) 22:41
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> 老人力という言葉の提案者なので
> インタビューを受けたり
> あちこちの講演会に行って話したりする。

講演をして思うのだが
講演会場というのは最新設備が多いのだけど、最新設備というのは映りがよくない。
げやけているのが多い。とくにデジタルというか、電子変換して映す装置ほどダメである。
うちはマルチ映像です、とか、ズームでアップできます、とか誇らしげにいうんだけど、映りがぼやけてはどうしようもない。
そういう場合は、スライドを持ち込んだこちらとしてはがっかりだ。
従来のスライド装置で映した方がはるかに綺麗である。
でもそのことをいっても、会場の係の人はきょとんとしているので、二度がっかりである。
装置は最新で、高額なので、そんなはずはないと頭で思っていて、実際の映像のよしあしには無頓着な様子である。

この間はもっと驚いたことがある。やはり路上観察のスライドを持って行って、控え室でケースにセットして会場に行ってみたら
最近建てたらしい公共建築の、入口ホールが吹き抜けになっている。
そこに映写機があってスクリーンがある。天井を仰ぐとずっと上がガラス張りになっていて、さんさんと日が差し込んでいる。
横にもたくさん窓があって、しかし遮光幕の装置がどこにもないのだ。要するに暗くできない。
えっ、これでどうやって映すの?
いや、大丈夫です。ライトのパワーを上げれば映ります、という。
パワーなんて上げたって、コントラストの強い一部がかすかに映るだけで、もともと明るいスクリーンに映像がちゃんと映るわけがない。スライドが痛むだけだ。
もちろん映写はやめたが、係員がそれを不服そうに受けとめているので二重にショックだった。事態を何もわかっていないのだ。自分でわかろうとする頭がないのだ。
しかもそのスクリーンというのは、壁際に一部低く設置された天井に格納式のもので、ボタン一つで自動的に下りてくる。つまりそういうものとして、堂々とつくられているのだ。
まあいろんな税金の使い方があり、いろんな人生がある。
   ーーーーーーーー

建物や装置が立派なものでも、機能性を考えてつくられていなかった。
あるいは最新設備の扱い方が十分理解していなかった。
もっと装置が上手な人の手にかかれば、うまく映ったかもしれない。
ただ、最近の学会などではスライドはほとんど使われない。だから、講演会場もスライドに対応していないかもしれない。
コンピュータと液晶プロジェクターの組み合わせが現在の学会講演の標準になっている。
私の場合でも、スライドそのものを講演会場に持ち込むことはなく、事前にそのスライド画像からデジタル画像に変換した画像ファイルを会場で映すようにしている。