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[No.16112] 三浦英之:水が消えた大河 投稿者:男爵  投稿日:2010/11/14(Sun) 09:17
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新潟県を流れる信濃川は、上流の長野県では千曲川という。

山梨県・埼玉県・長野県の境にある標高2475mの甲武信岳から流れる千曲川は
槍ヶ岳(標高3,180メートル)から流れる梓川が名前を変えた犀川と、長野市内で合流して、長野県を出ると信濃川になる。

新潟県の信濃川はよく洪水をおこし地域の人々を困らせたから、大河津分水や関屋分水という立派な土木工事によって、新潟県民は洪水から守られるようになった。
(明治村の村長室の建物の二階には、大河津分水の難工事のビデオ放映がされていた)

ところが
この信濃川も水量が極端に少なくなる地域があったのである。
長野県のぎりぎりの県境に東京電力西大滝ダムがあり、その下流の新潟県のJR東日本宮中ダムが問題のダムであった。
どちらも発電のためのダムなのだが発電に必要な落差がそのままでは足りないため
ダムのところで地下トンネルを掘り水を脇になるべく水平に運び発電機のところまでひっぱってきて、そこから一気に水を落としその落差で発電している。

発電の方はそれでよかったのだが、地下トンネルに信濃川の水をほとんどもっていかれるため、肝心の信濃川には(この本によると)数パーセントの水しか流れない。
そのため魚は減り水生昆虫もすみかをうばわれてしまった。鮭も魚道が不適切なこともあって放流してもほとんど遡上しない。

信濃川をよみがえらせようという地元の環境保護団体の地道な運動に、天が配慮したのか、国土交通省が河川の環境保護というそれまでの河川工事管理からの考え方を転換した。そしてJR東日本にはタイミングが悪く、契約以上の水をトンネルに流していたことが国土交通省から指摘され、とうとう宮中ダムの発電はストップがかかってしまう。
ここで発電された電気は東京の山手線を動かす電気なので、困ったJR東日本は地元の十日町と交渉をして、地域に寄付金を出したり、ローカル線飯山線のサービス向上を示し、なんとか宮中ダム発電の再開にこぎつける。もちろん昔のような大量の取水は発電にまわせなくなり、信濃川の水も増えてきた。