[No.16120]
Re: 五木寛之:みみずくの日々好日
投稿者:男爵
投稿日:2010/11/15(Mon) 11:12
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今の若い人にはなんのことやら見当がつかないだろうが、著者たち昭和の子どもは、戦争の時代に育った。
小国民とよばれ、戦争のために役立つ教育をほどこされた。
モールス信号も、その一つだった。
そのモールス信号を全部覚えるのは大変なので工夫があった。
ト・ツー 伊藤のイ
路上歩行のロ
ハーモニカのハ ツー・ト・ト・ト
ノといえば ト・ト・ツー・ツー 乃木東郷
著者が若いころ、宴席で何か芸をやれと強制され、困ってしかたなく、立ち上がって手旗信号をやった。
イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トと順番に両手をふり回したが、これがまったく受けなかった。
手旗信号は、海洋少年団の訓練で体に叩き込まれた。まちがうと手旗の棒でコブができるほど殴られたものだ。
頭も体も、やわらかいうちに刻み込まれたものは、一生残る。消そうと思ってもどうにもならない。
せめて外国語でも叩き込まれていれば、いまになって役立ったものを。
軍人勅諭(ぐんじんちょくゆ)を全部暗記しているという著者
小学生時代に無理やりつめこまれたので、終生消えずに残っている。
消去するという意味のイレーズという言葉はおぼえたが、古い記憶をイレーズすることはできない。
困ったものだ。
(人間が自分の意志でコンピュータのように記憶を消去できたら便利だ。そうはいかないのが生き物なのだ)