[No.16134]
野村進:コリアン世界の旅
投稿者:男爵
投稿日:2010/11/19(Fri) 07:56
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野村進:コリアン世界の旅 1996
まず目次
・帰化 歌手にしきのあきらの場合
・焼き肉はどこからきたか
・日本人が知らない「民族教育」
・パチンコ問題の構造
・世界でもっとも危険な街に生きる在米コリアン
・サイゴンに帰ってきた韓国兵たち
・韓国人ボクサー 父と子の夢
・済州島 ニッポンに一番近い島
・金日成は生きている
・大震災のあとで 神戸市長田区の人々
・Jリーグのコリアンたち
・新井英一 夜明けへの旅
歌手にしきのあきらは父の代から帰化しているが
自分は韓国人の血を引いていることを隠そうとしない。
だが、芸能界には隠す人が少なくないという。
「『紅白歌合戦』はわれわれがいなかったら成り立たないんですよ」
にしきのの父は、日本に帰化した小畑実の歌が好きだった。
都はるみ、松坂慶子、たけしは韓国・朝鮮系の血を引いていることを隠さないが
芸能界にはもっとたくさんいるはずだが、本人も回りも知らせないようにしているという。
美空ひばりが「悲しい酒」を歌う時、あれは在日ゆえに別れた父のことを思って泣くのだ、決して離婚した相手のことを思ってではないということは、他の本にも書いてあった。
「韓国がベトナム戦争に参戦したのは、経済的理由である。
アメリカから金をもらって傭兵となったのだ」とわかりやすく説明する元韓国兵士。
韓国が参戦する代償としてアメリカから大量のドルをもらって
その金で高速道路や重工業がはじまったというのだ。
他の韓国人からも著者は、朝鮮戦争で日本の景気が良くなったように
ベトナム戦争で韓国の景気が良くなったということを聞く。
いまベトナムには韓国人の血を引く混血児が相当数いるが、
韓国軍兵士とベトナム人女性の間に生まれた子どもは少なく
大部分はベトナム戦争中に技術者や労働者として南ベトナムに来ていた韓国人男性が
ベトナム人女性との間にもうけた子が9割をしめるという。
二人の元大統領の全斗煥も盧泰愚もベトナム戦争での武勲舎だったから、ベトナム参戦批判など韓国内でできなかった。
ロスアンゼルスでの在米コリアンたちは
当時の暴動は
黒人やヒスパニック貧民層の白人社会に対する憤怒のはけ口にされたと訴える。
著者によれば
あの暴動は「黒人対韓国人」の抗争というよりは、黒人よりはるかに多いヒスパニックが略奪や破壊に加わっていたという。
ヒスパニックより概して高賃金で権利意識も高い黒人がコリアンの店主に雇われていることはあまりなく
その反対にコリアン店主はヒスパニック従業員を低賃金でこき使い、陰で「ケーセッキ(犬畜生の子)」などとさげすんで同列の人間とはみなさない。ときには店の品物をヒスパニック従業員がくすねたりすると「この恩知らずが」と即座にクビを切ってしまう。ヒスパニックのほうも、とりわけ暴動以降、自分たちが「泥棒」よばわりされていることに気づいてしいるものの、ほかに職がないからコリアンの下で働かざるをえない。怒りは屈折し内向する。
在米コリアンの研究をしてきたある研究者は、暴動の原因がアメリカの経済構造にあることを前提とした上で、コリアンの他民族に対する意識の歪みを指摘する。
「つまり彼らは両班ゲームをやっているのだ。自分たちが両班でないことを知っていながら、両班の家系であることを主張して、両班のように振る舞おうとしているのである」
この本には
日本の中でたくましく生き、日本人と理解し協力して生きる在日の人たちのことや
彼らを理解して助けている日本人たちのことも多く書いている。
全体的にはコリアンに対して暖かいまなざしをもっている。