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[No.16408] 脇山太介:家出人の捜し方 投稿者:男爵  投稿日:2011/01/09(Sun) 08:54
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誠文堂新光社の本 2003年

一口に家出といっても、その状況には様々な背景があり、それぞれ個別の事情をもっている。
似たようなケースはあるが、同じ内容の家出というものはひとつとしてない。
この本の著者は調査会社を経営していて、頼まれて家出人を捜す際に、先入観をもってはいけないと自らいましめている。

大半の家出にはそれぞれわけがある。著者の会社のように、家出人に関わろうとするのであれば、このわけを大切にする必要がある。

家出というのはひとつの現実逃避と考えられる。別の世界に逃げ込みたいという気持ちは、当然現実の世界にいたくないという願いからくるものである。
なぜそのような気持ちになったのかというわけを探し出し、家出人がいま何を実現しようとしているのかという目で見ることが大切なのである。

著者が調査会社「株式会社アイ・アイ・サービス」を立ち上げたのは昭和49(1974)年である。その翌年から「それは秘密です」(司会:桂小金治)という番組で調査を担当してきた。

家出の原因
 家庭問題 家庭内暴力からの回避、児童虐待をのがれて
 異性問題 交際相手との結婚に親から反対され駆け落ち、不倫の駆け落ち(矢切の渡しもこの分野か)
 職業問題 経営していた会社の倒産、リストラによる社会からの逃避
 学業問題 学業不振による現実逃避、校内暴力やいじめからの回避
 疾病問題 精神疾患や痴呆症で失踪、その他病苦から
 借金問題 債権取立などからの逃避
 犯罪関係 暴力団関係者からの逃避、罪を犯したことによる逃亡
 その他  都会への憧れから、宗教への入信、放浪癖、拉致や誘拐

捜し方のテクニック
具体的でかつ常識的な説明なので良心的な本だという印象を受ける。
たとえば家出人のいた部屋を探せば、家出の原因や行き先を示すメッセージが残っていることがあるとか、携帯電話やパソコンに残っている通信やメール記録から探るとか、銀行や郵便貯金の利用状況から足取りを探る等、地道な捜索方法を教えてくれる。
たいては友人がいて有力情報を知っているものだが、めったにそういう情報は他人には話さないものだから、家出人のことを心配しているということをわからせるよう説得しながら、友人から家出人の情報を聞き出すテクニックも述べている。
ホームレスが集まる場所での調査方法のテクニックもやはり説明している。
こうして集められた情報の中には、役に立たないものや間違った情報でかえって捜索のじゃまになるものもあるから、大局的な見方も必要になってくる。それは経験を積んだプロの仕事なのだろう。

この本には、あらゆる資料を駆使して操作するという考え方なのか
家出人の出身県による特色や血液型や星座による特色まで述べられているが、これははたして役に立つのか.....
 茨城出身は口下手なため誤解されやすいがまじめであり、あまり細かいことにこだわらない。
 神奈川は新し物好きでおおらかであり、気さくで社交性もあるが、かっこうをつけすぎる面もある。
 岐阜は勤勉で堅実、かつ実直であるが、そのわりに要領がいい。
 大阪は金銭感覚が抜群である。気さくで明るく、バイタリティもあるが、だれにでもズケズケものを言う傾向がある。
 福岡は新し物好きで陽気である。祭り、酒、おしゃべりを好み目立ちたがり屋が多い。

この本には最後に家出の実例が紹介されている。
・浮気が原因による家出
  寒い日の早朝に妻の家出の相談がその夫から入った。妻は出会い系サイトの利用者か? パソコンの記録から相手の男性を推定し調査したら、男の事務所と住んでいる住所は違うことがわかった。一緒に住んでいる実母は借金に追われている息子のことは心配しているようだが何もできない。結局、この男に欺されている妻を調査員は見つけ、妻も反省して夫の元に戻る。仕事ひとすじで家庭をかえりみなかった夫が妻とのコミュニケーション不足だった状況があった。
・家庭問題が原因の家出、ヤングホームレス
  高校二年生の長女の家出。母親の必死の捜索願いに対して、父親は割合冷淡な印象。調査した結果、家出人女子高生の弟には携帯電話を持ってきてほしいという依頼があったことを知り、携帯電話を隠した両親には内緒で調査員は弟に別の携帯電話を渡す。そこから、女子高生の居所は公園でホームレスをしているはずと推定し探すが見つからない。若いホームレスたちと会話をするようになり、彼らから探している女子高生は近くの別の公園にいることを教えられ家出人を発見する。真相は母親は子連れの再婚だった。女子高生にすれば義理の父親で、弟が生まれると父からこの娘は虐待されるようになってとうとう家出をしたというわけ。それを聞いた母親は二人の子どもを連れて離婚する。 
・老いの虚無感が原因、シルバー世代の家出
  家出人は、若い頃夫の仕事の関係で、海外生活も長く英語も堪能で、帰国後は子育てをしながら、自宅で英語教室を開いていた。78歳になっても向学心が旺盛で、週に2回は近くのカルチャースクールに通っていた(英文俳句とコンピュータ講座)。失踪した時は大晦日の夜、近くの教会のミサに行くと夫にことわり、車を運転してでかけたが戻ってこなかった。調査員はカルチャースクールの英文俳句の先生から詳しい話を聞く。この英文俳句の先生はアメリカに行っていて、この講座は先生の都合で3月に修了することを大変残念がっていたということを聞く。受講生たちの俳句作品集があるはずと聞き、カルチャースクールの事務室に残っていた一冊のコピーをとってもらい、家出人の作品を知る。それが手がかりとなって成田空港近くのホテルで発見する。
    Thinking of my young days
    Remember my happy days
    Standing at the airport
ホテルのティールームで家族が来るまで相手をすることにした調査員はこれまでの状況を説明すると、このシルバー世代の婦人は笑いながら言う。
「まぁ、私が家出ですって? そうね。家出もいいかもしれない」


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