官庁と国民の間でやりとりするデータには、「上りデータ」と「下りデータ」が あります。「上りデータ」は、所得税申告のように、国民から官庁に提供する データです。一方、「下りデータ」は、住民票や印鑑証明書のように、官庁が 国民に提供するデータです。
書類によるデータ提供の場合は、この上り下りの違いや、データの重要度の違い によって、手続きの難易度が異なっています。たとえば、所得税申告は、本人 認証は三文判。データが安全に税務署まで届けられればそれで十分なので、 税務署に持参あるいは郵送ということになっています。だからこそ、書類ならば、 親の申告を子が行うことも簡単なのです。
ところが、イータックス、エルタックス、イーガブは、お役人が基本設計の主導 を怠り、ITマニアに設計を丸投げしたためか、書類の取り扱いとはまったく 整合性のないシステムとなりました。整合性があるように見えるのは、プリント した書面だけ。e-Gov は、entangled Government の略かと思わせるほどの惨状と なっています。
一番問題なのは、「上りデータ」と「下りデータ」を同列に取り扱っているうえに、 データの重要度も無視していることです。これによって、簡単に届けられる書類が、 電子化されると、複雑な手続きによってしか届けられなくなり、手軽に得られる べき情報が、難しい方法でしか得られなくなっています。これでは、いくら笛を 吹いても、大衆は踊りません。
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