最近読んだ本です。 林信行 日経BP社 2010年
高価なCPUを搭載すると、その分、本体が熱くなったり、バッテリーの消費が激しくなったりするものだが、アップルは、おそらくこの部分をOSとCPUの両方からうまく調整しているはずだ。コンピュータ側に負荷がかかっていない間はCPUの電力消費を抑えるといった具合にハードウェアとソフトウェアの両方から最適化しているのだろう。
ソフトとハードの統合はなかなか難しい。CPUをつくっているメーカー、本体をつくっているメーカー、OSをつくっている会社、アプリケーションをつくっている会社がバラバラのWindowsパソコンでは、なかなか調整が難しい。 アップルはすべて自社でまかなっているので、きわめて柔軟な調整ができる。
たとえば、iPadのアルバム機能で写真を表示後、画面の下のほうを指で触れると、そのアルバムに入っているすべての写真が小さく一覧表示される。この上を指で滑らせると、写真が秒間60枚くらいの目にも止まらぬ速さで次々と切り替わる。指を左右に振ると、ちゃんとその動きにあわせて写真が切り替わり、そのあまりの速さに度肝を抜かれる。 この写真切り替えの速さはA4プロセッサーの恩恵だけによるものではない。実はOS側でちゃんと工夫がしてあって、高速切り替え中の目にも止まらない写真は、かなり解像度を落とした画像になっている。動かしていた指を止めると、その瞬間にその写真を読み込んできれいな画質で描き直している。どうせ高速に画像を切り替えている最中は人間の目でも画像の粗さがわからないので、無駄にCPUに負荷をかけない。それでいてユーザの指が止まったら、CPUとメモリーの速さを活かして瞬時にその写真を読み込む。こうしたハード、ソフトの両面からの最適化はいかにもアップルらしいやり方である。
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