アンデルセンの童話
ぼくは貧しい若者。 お月さまが自分の見てきた光景をぼくに話してくれるから それをまとめた。
なにしろお月さまは世界中で見られるものだから 当然お月さまは世界の景色を眺められるのである。
ガンジス川のインドの娘、パリのルーブル宮殿、スウェーデンのウプサラ グリーンランドのオーロラ、ポンペイの廃墟、ドイツの編集長の部屋 リューネブルクの荒野、イタリアの劇場のプルチネラ、ローマの宮殿の女の子 北アフリカの隊商、チロル地方の女子修道院 昔のコペンハーゲンのみすぼらしい部屋のつむぎ車、フランクフルトのユダヤ人街 シナの町の若者や娘、スウェーデンの古いブレタの修道院 そして特に国名や地名がない諸々の町や村の光景はたぶんデンマークのものだろう。
この「絵のない絵本」が最初に出たのは1839年、そのときは二十夜までだった。 それから三十三夜まで追加して1854年に出た。
阿片戦争(1839年-1842年)のことを考えると 第二十七夜のシナの話はアヘン戦争後の香港が舞台だったのだろうか。 あるいはずっと前からポルトガル宣教師たちが住んでいたマカオのことだろうか。 注意して読み直すと、少年は異国人たちの故郷のイギリスに行ってみたいと書かれてあるから 香港だということがわかる。
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