森鴎外の「雁」は ふとした偶然で投げた石が雁にあたり 高利貸しの妾お玉は、医学生の岡田に慕情を抱くが、結局その想いを伝える機会を失い、岡田はドイツ留学に行ってしまう。
「舞姫」がそうであったように 森鴎外の経験が反映されているような短編。
岡田が鴎外のモデルかと思えば お玉と旦那との関係に経験者でないと書けないようなリアルな描写もあり 実は鴎外がお玉のような妾を、母のお膳立てでもっていたという。
最初の結婚は短く、それからドイツに残したエリスのことが忘れられなかったのか 10年以上も独身を続けたので母親が心配して そういう女性を配慮したということである。 (28歳で離婚して40歳で再婚)
鴎外としたら、妻になれないその女性の気持ちを忖度したのかもしれない。 今の感覚なら不思議な気もするが 鴎外の母親は死ぬまで嫁に家計をまかせず、鴎外の給料は自分が管理したというから そうとうな権力者だったらしい。
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