「橋のない川」は、住井すゑの代表作。 1部から7部まである。
永六輔が、そのうちこの小説はなくなってしまうから 今のうちに読んだ方がよいと、どこかに書いてあったので 読んだことがある。 (まだ図書館には置かれてあります)
最初のうちは迫力があるが しだいにマンネリになっていく印象。 作者が年齢が進むとともに体力がなくなっていったせいか あるいは このテーマをいつまでも書きたいと思って 作者のマイペースで書き続けるのが 私にはゆるいテンポに感じられるのか。
橋のない川とは部落の差別を象徴する川のことなのだろうが 最初の場面で 二人の兄弟の母親ふでが 戦場に送った夫の夢を見る描写がある。 その夢の中で、ふでは夫と手をつないで歩いているのだが 二人の間にあった小川はしだいに水量がふえ大きな川になっていって とうとう二人は手を離してしまう。
そうして二人は歩み続けるのだが、再び手をふれあうこともできない。 二人の間には決して渡ることのできない川が歴然と存在してしまうのだ。 決して渡ることのできない川は、日露戦争に出征して生きて帰って来なかった ふでの夫を象徴していることになるのだろう。
しかし 私には、作者がこの小説を書くきっかけになったのが 夫との死別であると思われるので 作者住井すゑ自身が夫との別れを象徴しているのだと思っている。
彼女は愛する夫の遺骨をタンスにしまって ときどき、その遺骨をいとおしそうにかき混ぜるのだと 生前に語っていた。
彼女には、夫の墓参りをするよりは、タンスの遺骨をいとおしむのがよかったのだろう。
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