> 日経コンストラクション編:東日本大震災の教訓 土木編 インフラ被害の全貌
土木学会誌に掲載されている報告記事をふくむ内容である。 (この本の姉妹編の建築編は、おそらく建築学会誌に対応しているであろう)
櫛の歯作戦 三陸沿岸をはしる国道45号は一部が地震あるいは津波で破壊されたため この道路を南から北に一路走ることはできないので 救援の車や物資輸送の交通のため内陸から東西方向の道路を使った。 三陸縦貫自動車道路は部分開通していたが、その路線は海からはなれた高いところを走っていたから、災害復旧の役に立った。もっと建設工事が進んでいればなおよかったのだが。
今回の東日本大震災の地震波は大きさは大きかったのだが、卓越周期が0.5秒以下だったので 構造物と共振現象を起こさなかったため構造物の被害は少なかった。 しかし、津波では浮力と津波による横力という従来の橋の設計では考慮しなかった力が作用したため海岸の橋梁は被害を受けた。 これからは浮力や津波の横の力を考えた橋の設計が必要になる。
多くのメディアは防潮堤や防波堤を越えて津波が襲ったから役に立たないと報道していたが 専門家はそう思わない。それなりの効果はあったということである。 もし防潮堤がなければ高い津波が押し寄せたところを、それより低い津波が押し寄せたり 津波襲来の時間を遅らせることができたので避難するのに時間稼ぎができたから。 今回の津波でも自然の島の多い松島は、他の地域にくらべて津波の被害が比較的少なかった。
津波の被害をゼロにするにはもっと高い防潮堤や防波堤をつくればよく 理論的にも技術的にも不可能ではないが、膨大な費用がかかるから現実的ではないだろう。 現在の被害にあった防潮堤や防波堤はそれでも時の予算の審査を受けて、なんとか理想に近いものをつくってきたのである。 安全性や将来の災害に備えてもっと大きな物をつくろうとすると、ブレーキとなるのが予算であり会計検査である。会計検査の害もなかなか議論されないものである。
北海道の奥尻島の例にならい、防潮堤整備と高台移住が東日本大震災の被害地の復興の基本となるであろう。
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