なぜひとは、世界中どこでも、こうした愚か村話を愛好するのであろうか。
日本にも、愚か村話は、今までに決して少なくない数のものが、ひろく全国で、伝えられてきた。
宇井無愁氏によれば、日本のおろか村話には、三種類のものがあるという。村人が役人の命令などが理解できなかったため起こる騒動、また無知の村人が町へでて醜態を さらすもの、町から帰った村民が、そこで得た消化不良の知識を振り回し、それが大事件に発展するものなどであるという。
ところで、上掲書には世界中の愚か村の話が満載されている。
一例をあげると、イギリスのコーンウオール州トゥルーロの男が、塔のまわりの蔦に肥しをやっているところを見て、てっきり塔に肥しをやって大きくしているものと勘違いして、まいにち見物にやって来ては、もう大分大きくなったか、と聞くという話。
これを読んで、東京スカイツリーを思い出した。あれは、たいして肥しをやった風には見えなかったけれど、エラク大きく育って、高さ634メートルにもなったらしい。
一方、イギリスのトゥルーロのヤツは、やった肥料が粗悪品だったせいか、一向に大きくならなかったようだ。
また、何かを撒くという点では、遠藤周作がこどもの頃、雨の日にわざわざ長靴を履いて庭の花壇へいき、家のじょうろで一心不乱に水やりをしたという逸話をどこか読んだことがあるが、真偽のほどは保証できない。
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