板倉聖宣:〔増補版〕模倣と創造 科学・教育における研究の作法、仮説社゛ない
この本については「メロウ談話室」で紹介しました。
模倣をするのはしかたがない。 出典を明らかにすれば模倣はゆるされる。 引用してもよいから、自分の独創性を明らかにすればよい。 など著者は述べてあります。
ここでは ファーブル昆虫記の日本語翻訳を例に 「翻訳はあとになるほど悪くなる」と述べています。 前訳があればそれを参考にするから あとから訳せばよくなるはずだが 真似をしたと思われたくないから自分の独創性を出そうとして わざと違う文章を書く傾向があります。 あきらかに前訳者の訳を参考にしているのにどこにも明記していないが、その前訳の一部が誤訳だったりしていて誤訳部分をそのまま受けついでいたりすれば、この訳者は原文にあたってないのではないかと厳しい指摘もしています。
それから 前訳者についての説明はたいていはぶいているし 時には誤解している場合があると この著者は指摘しています。
さて ファーブル昆虫記ですが 日本で最初に翻訳したのは大杉栄なのですが 彼が政治犯だったことに出版社や翻訳者が遠慮してか 彼のあとの翻訳者たちは、あまりそのことにふれられていないようです。
そもそも この本は賀川豊彦が注目して、大杉栄がそれを翻訳したのですが 当時の社会主義者たちが科学啓蒙運動をしていて 大杉栄はその流れの中で昆虫記を啓蒙書として訳したのでした。
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