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[No.689] 「原子力ムラ」を超えて 投稿者:男爵  投稿日:2011/12/21(Wed) 10:57
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原子力機器を設計するガイドラインもそれに沿った設計パッケージも
日本ではまったくの空洞でしかない、と著者は厳しい。
 1995年と2010年の福井県敦賀の「もんじゅ」の事故
 温度差を測定するセンサーである熱電対が折れてしまった。
 燃料を交換時に仮置きするパイプ状の炉内中継ぎ装置が炉心の上に落ちた。

 2002年から2003年にかけて東電トラブル隠しでは、いろいろな検査データを
 内々でごまかしていた。東電の隠蔽が明るみに出たきっかけは
 東電の協力会社の人間がトラブル隠しについて、まず保安院に内部告発した
 ことにあった。すると保安院は、そのことを握りつぶしただけでなく
 東電に対して「こんなことを言ってきたやつがいるけど大丈夫か」と告げ口した。
 そのため、内部告発した人はもう東電の協力会社を退社せざるをえなくなった。

 この話が当時の佐藤栄佐久福島県知事の耳に届き、これはとんでもないと
 福島県が表ざたにすると、原子力安全・保安院は態度を一変して
 急に「正義の味方」としてふるまい、東電はとんでもないと言いはじめた。

福島の事故に対して「想定外」という言葉が使われたが
2007年にも柏崎刈羽原発を中越沖地震が直撃したときも「想定外」という
言葉が使われた。このときも、原子炉本体に許容応力を超えるゆがみが生じ
変圧器に火災が発生し、東京電力がまったく対処できなくなった事故であった。
 そのころに出された耐震基準の見直し案に対しては、神戸大学石橋克彦先生などは
全然この見直しじゃだめだということをしっかり指摘していた。
 福島の第一、第二原発に関しても、「全電源喪失が起きたらとんでもないことが
起きる」とか、「津波はちゃんと想定しているのか」といったことがすでに
各方面から幾度となく指摘されていたわけだが、東電の対応がまずくて
今回の事故では、それらの指摘が現実のものとなってしまった。

2002年に福島の第一、第二原発は大規模な点検を行ったのだが
この点検はまったくのデタラメだった。内部告発により、数々の損傷個所のあることや
それもシュラウドと呼ばれる炉心を支える主要な部分にも及ぶことなどがあったにも
かかわらず、東電は点検記録を改ざん・隠ぺいしたのであった。
この結果、東電は責任をとる形で、南直哉社長以下、会長、副社長、相談役など
5名の役員が辞任した。

それで東電は生まれ変わったかというと、そうではない。今回の福島原発の事故
を見れば明らかであろう。

さらに国の体質も変わらなかった。
 当時、原子力安全委員会委員長だった松浦祥次郎氏は、メディアの取材に対し
「足もとをすくわれた思い」などとコメントしていたが、トンデモナイ。
要は東電に責任を押し付け、自分自身を被害者であるかのように
装ったわけだ。これは見苦しい言い訳にすぎないと断定して
足元をすくわれるような危険な状況をつくったのは、ほかならぬ国であると
佐藤栄佐久元知事も言っている。

この本ではさらに
東電は逆立ちしても鼻血も出ないような状況当時まで賠償させなければならない、送電網を含めて、資産の売却も必要だなど過激な意見が述べられている。