池田信夫:イノベーションとは何か
この会議室のために色々な本を読んだのだが この本はさっぱりわからなかった。 専門外のこともあろうし、著者の説明がさっぱりわからない。
まえがきだけはナルホドと思ったのだが。
生産性を上げるためにイノベーションが必要だ、というのは以前から いわれているが、具体的に何をすればいいのかはよくわからない。 企業も「イノベーションが大事だ」というが、やっていることは今の製品に 新しい機能を付け加える「改良」ばかり。 もちろん改良や品質管理は重要だが、日本の企業はそれだけでは生き残って いけない。かつてアメリカをまねる立場だったときは、同じ目的をいかに 効率よく達成するかが重要だったが、新興国にまねられる立場になった今は 目的そのものを発見する方法論が必要になる。
「イノベーションとは何か」と題したビジネス書はたくさん出ているが そのほとんどは過去の成功事例を列挙して結果論を述べてものだが たとえば「スティーブ・ジョブズ」は大好きなことをしたからイノベーション を実現した」という事実が正しいとしても、そこから「大好きなことを すれば常にイノベーションが実現できる」という法則は導けない。どうすば 成功例を事後的に説明することは容易だが、理論なしにデータをいくら 集積しても、どうすれば成功するかは事前にわからないのだ。
経済学にはイノベーションについての理論がまったくない。最近は少し 出てきているが、その多くは「イノベーションが経済成長にもっとも重要だ」 という事実を証明するもので、どうすればイノベーションが生まれるか にはほとんどふれていない。 それは当然で、伝統的な経済学では企業がどうやって利益を最大化するかは 市場の外の問題で、経済学の対象ではないからだ。
著者は すぐれた技術が必ずしも必要でないというし 顧客の要望を聞いただけでもだめで、市場の見方(フレーミング)を変えることだというし すぐれた規格が競争に勝つとは限らないという。
お客は気まぐれだし、あのソニーのビデオがそれより精度が悪いはずの多数派のビデオに負けたように、理論通りに市場が動くものでもない。 市場の見方を変えるというのは、テレビやタレントなどをつかって新しい流行ファッションをつくることなのであろうか。
何が売れるかはこれはわからない。 試行錯誤の世界。それが理論的にいくなら楽だろう。
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