いまはもうその面影はなくなってしまったが 昭和40年代までは、有楽町といえば新聞社の町だった。
朝日、毎日、読売の三大新聞社をはじめ各地方紙の東京支社があり 町にはジャーナリストの活気があふれていた。
外堀川というのは、現在の高速道路(その下に西銀座デパートやコリドー街がある) の下を流れていた川(掘割)で、銀座と有楽町をへだてていた。 菊田一夫の「君の名は」で一躍有名になる数寄屋橋はこの川に架かっていた橋である。
戦前の掘割川をみごとにとらえている映画がある。 昭和11年に作られたミュージカル映画「東京ラプソディ」。 これはヒットした藤山一郎の「東京ラプソディ」を基につくられた。 冒頭に外堀川が映し出される。「東京ラプソディ」の明るい歌が流れる中 数寄屋橋、朝日新聞社、その隣の映画館の邦楽座(のちの丸の内ピカデリー)、泰明小学校が次々に映る。
「君の名は」の映画にも、外堀川、数寄屋橋、朝日新聞社がとらえられている。 川べりには、水中に杭を立てて、その上に建物を張り出した「竹の家」が見える。 当時、銀座周辺の掘割にはこれがよく見られた。
川本三郎:銀幕の東京 中公新書1477
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