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ヒロシマー本川小学校の童子像ー 投稿者: 投稿日:2023/04/07(Fri) 17:16 No.22

 平和資料館のある本川小学校の正門を入ると、ふいに目の前が、明るくなった。桜は八分咲き。ヒヤシンスの花は鈴なりに咲き、児童の名の書かれた鉢の苺は、白花を覗かせている。新入生を三日後に迎える前庭の華やぎの一隅にその童子像はあった。
「あんなところにお地蔵さまがいる」と発せられた少年の声がなければ、気が付かないほど、ひっそりと立っていた。
「背に詩が刻まれています」案内の方に教られ覗き見ると文字が刻まれているのが読み取れた。
―消えし児の還りて咲かむ海棠の花―
 広島の中洲を造った太田川は、相生橋から元安川と本川に分かれ海に注いでいる。1945年8月6日、午前8時15分、原爆搭載機B29エノラ・ゲイの爆撃手は、投下目標のT字型の相生橋を照準に捉えて、自動装置のスイッチを押し、原爆を機体から放った。原子爆弾は上空580mで閃光を放って炸裂し、灼熱の火球を作った。火球の中心温度はセ氏10000℃を超え、1秒後には、最大直径280mとなり、周囲は4000℃近くに達した。爆心地からもっとも近い学校の本川国民学校(現本川小学校)の建物は、瞬時に火を噴き、登校していた児童及び教職員は、即死に近い状態で全滅した。と記録されている。
被爆死した児童の父が小学校を訪れた際に、当時の平川校長が、句を贈った。昭和53年句を刻んだ童子像が安置され、追悼記念樹としてハナカイドウが植えられたと校史にはある。バラ科のハナカイドウは、画のように花柄が長く垂れることから垂糸海棠とも呼ばれている。
 この春も本川小学校のハナカイドウは、花柄を伸ばし、付けた蕾を次々に咲かせていることだろう。春になるとあたりまえに咲く、あたりまえでない有難さ。

参考文献:「ヒロシマ散歩」植野浩著・「図録ヒロシマを世界に」広島平和記念資料館編集
掲載誌:俳句同人誌『かつしか』第20号2010年7・8月
掲載Webサイト:Honkawa Peace Museum http://www7.plala.or.jp/honkawa-pta/peace.htm 
       平和資料館のページへ>校内の資料>ねむれる花~海棠~

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