パネル討論の印象

 

 
司会の竹村氏は、文化人類学者です。
 −−−ということは「高齢者や障害者がパソコンを使う」ということは、文化人類学的なテーマなのかなーーーと妙に感心してしまいました。ただ、同氏はマルチメディアが専門と伺っています。
 また、こういうパネル討論の司会は慣れていらっしゃって、全体を上手くまとめておられました。
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 和波さんの話からは、大変感銘を受けました。
 全盲の方が、パソコンを使いこなすーーーということは、想像もしていなかったので、まず、普通のノートパソコンを自由に使いこなしていらっしゃるのにびっくりしました。
 和波さんのような方は、ネットサーフィンをするときはホームページ・リーダーというソフトを使って音声で聞くことになるのです。会場で、そのデモやってくださいましたが、音声が女の声から男の声に変るところがあり、この「声の変わっている部分」はリンクが貼ってあることを意味しているのだと伺って、なるほどと思いました。
 なお、和波さんのホームページは、専門の方に作ってもらったものだそうですが、全盲の方で、ご自分で、
html 文書を書かれる方もいらっしゃるーーーという話には、すっかり感心してしまいました。
 いま、視力障害者で点字の読める人は全体の10%に過ぎない。むしろ、点字より、パソコンや電子手帳式の情報機器を普及させるべきなのではーーーというご意見にもうなずけるものがありました。
 また、お話の中で「ボクは皆さんが想像していらっしゃるより、毎日、結構楽しくやっています」という言葉が出てきたのも印象に残りました。
 和波さんのような超人的な方でない、普通の視力障害者の方が、普通に使いこなせるパソコンなどの情報機器が早く実現することを心から祈ります。

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 大阪NHKからみえた泉谷さんは、
 障害者向けの番組に長く取り組んでいらっしゃる方です。
 目下、障害者が楽しめるホームページ作りに取り組んでおられます。
 この方のお話も、印象的であった。
 一口に障害者といっても障害の種類、程度は一人一人違う。
 たとえば、手の動きに障害がある方には、専用のマウスを用意するとかーーーそれぞれの障害に応じて対策を考えていかなければならないのだそうです。。
 視力障害の方ーーーに限っても、簡単には行かない。視力の弱い方むけには、単に、フォントを大きくすればよいーーーというものではないのです。色覚異常の方の場合は、色の組み合わせによっても見えにくくなるのだそうです。
 こういう「見やすいホームページ」は視力の衰えかけたメロウ世代にもありがたい存在です。
 公共放送だから出来ることなのかもしれませんが、大いにがんばっていただきたいと思いました。

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 IBMの岩野氏の話で印象に残ったのは、IBMの基礎研究所のバリヤー・フリーのチームで視覚障害者用のソフト開発を担当しておられる方は、完全失明者ーーーという点でした。
機器やソフトの開発に障害者の意見を取り入れるだけではなく、障害者自身が開発に参画するーーーこれが大切なことだなーーーと思いました。

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 さて、肝心の「討論」なのですが、実は、ほとんどなされていないのです。
 会場準備不十分で、調子の悪いプロジェクターを取り替えるのに時間がかかったり、ケーブルが短すぎて、各パネリストの席に届かず、発表の都度、席を替わったりとか、余計なことに時間がかかりすぎて、終了時刻を15分延ばしたにもかかわらず、ほとんど「発表」で予定時間が終わってしまったのです。

 パネリストから出た意見のなかで、印象に残ったのは、

 ・NHKの泉谷さんに対して「障害者というと福祉の番組でとりあげることが多いが、障害者も、みなさんと同じように「あすか」や「葵徳川ーーー」などが見たいのです。そういう番組が視覚障害者も、聴覚障害者も、みんなで楽しめるようにしてほしい」という意見がでていました。

 ・それから、和波さんが「視覚障害者だから、パソコンは使いにくい、難しいものと思っていたのに、若宮さんの話を聞いていると、普通の人でも、結構、使いにくいものなのですね」とおっしゃっていたのが印象的でした。

 ・私からは「情報処理学会の会員さんは3万人と伺っていたのに、この会場のなかには、100人にも満たない方しかいらっしゃらないのは残念です。どうぞ、ここにいらっしゃらない会員さんにも「障害者、高齢者の意見」をお伝えください」とお願いしました。

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 会場の方の意見としては、メロウ倶楽部の方と、大学で数学とコンピューターを教えていらっしゃる先生からのご意見がありました。
 その先生の話は印象深いものでした。ーーーコンピューターの講義の開講の日には必ず、生徒にビデオを見せる。そのビデオは、筋ジスの患者さんが、わずかに動く指でパソコンを動かしてメールのやりとりをして仲間との交流をしているーーーという内容なのです。
 きっと、このビデオを見せることで、パソコンがコミュニケーションに果たす意味を学生に分からせようーーーと考えてのことと思います。そういう先生だから、こういうパネル討議に来てくださったのでしょう。

 私自身にとって、今回のパネル討論への参加は、いろいろな意味で非常に勉強になりました。
 こういう機会を与えてくださった、メロウの皆様方に厚く御礼申し上げます。
 また、応援団の皆様、ありがとうございました。