多胡輝:深層言語術 ごま書房
われわれは日常生活において 相手の言葉を額面どおりに受け取ったため 思わぬ行き違いを生じたり 相手との交遊関係、取引関係などに齟齬をきたすことがある。
こうした、額面どおりの言葉の裏に隠された 「もう一つの言葉」を、著者は「深層言語」と呼び 他人と話しあっても、その人の言葉遣いにたえず気を配り その人独特の言い回しに注目し、その人の性格や行動と結びつけながら 観察を行い続けた。
このように著者は 人間の言葉には、表面上の意味とは別に、深層言語的意味があることを明らかにし それを発する人間の心に、どのような欲望、性格、意図などが隠されているかを追求してきた。
それらの研究成果をまとめたのがこの本である。 以下にいくつかの例を紹介する。
◇大人になっても「僕」を連発するのは、幼児的性格の表れである。 ◇対話中の人間が、相手を名前で呼ぶのは、相手との心理的距離を縮めて親しくなりたいという心の表れである。 ◇自分より優位にある人間に「あなた」「...さん」という呼び方をする人は、相手と心理的に対等の立場に立とうとしている。 ◇目上の者が目下の者に発する問いかけは、婉曲的な命令である。 ◇問い返しや同語反復の質問は、形を変えた反論であることが多い。 ◇自分の話に「ええ」とうなずく人は、頑固で、なかなか自説を曲げない。 ◇ある事柄を代名詞に置き換えて話したがる人は、その事柄に心理的な抵抗感を持っている。 ◇「絶対」「まったく」といった全部否定、全部肯定は、情報の不正確さのカムフラージュであることが少なくない。 ◇「ご承知のこととは思いますが...」と言うときは、自分がそのことについてあまり知らないことの不安を隠そうとしている場合がある。 ◇お世辞には、自分もお世辞を言ってもらいたいという願望が隠されていることが多い。 ◇断定的な言い方の多い人は、権威に弱く、自分の主張に不安を感じていることが多い。 ◇抽象的な議論をいつまでも展開する人間は、その議論の核心に自信を持っていない。 ◇恋人や夫婦間で敬語を使い始めたら、別れが近いとみてよい。 ◇相手かまわずベラベラしゃべるのは、相手の攻撃に対する防御の意味であることが多い。 ◇ひとりごとは、内面の緊張の無意識的表出である。
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