発酵食品の研究者小泉武夫先生の本
目次 1 灰の生いたち 灰の誕生と埋火のこと 灰の成分と用途、そして灰屋のこと 2 灰と食 食べものと灰 酒と灰 醤油・味噌と木灰 海草と灰 料理と灰汁 3 灰の恵み 和紙・織物と木灰 染料・染色と木灰 やきものと灰 4 灰の効果 薬と灰 「秘術伝書」と灰 5 灰の恐怖 火山と灰 死の灰 6 灰と高貴 茶道・香道と木灰 習俗・宗教と灰 文学と灰
ピータン 灰はアルカリ性を呈するから微生物の汚染を防止する。 塩や石灰、草木灰などに水と土を加えてこねたものをアヒルの卵の表面に1センチほどの厚さに塗り、甕の中に入れて3〜6月間密封する。
腐敗酒を直す灰 日本酒製造において発酵が進みすっぱくなりかけた酒に、昔から「直し灰」として木灰を加え酒質を矯正した。 木灰はアルカリ性のため、酒の酸を中和させる働きがあり、木灰は臭みや雑成分を吸収する性質がある。 慶長年間に浪花の鴻池酒造で、蔵人が日頃から待遇の良くない主人の腹いせに酒樽の中に灰を入れたところ、酒はかえって済んで味も良くなったから、これを清酒のはじまりとする伝説があるが 著者によると平安初期醍醐天皇の「延喜式」にすでに酒造に木灰を加え澄酒をつくることが記載されているという。
海藻をつかった製塩法 古くから製塩方の一つに藻塩焼きがある。海から採った海藻を浜に積んで これに幾度も幾度も海水を注いでは乾燥させ、これを焼いて塩灰をつくり それを釜で煮詰めて塩をとるものである。 この方法での製塩は主に海浜の海女の仕事とされていた。 「須磨の海女の塩焼衣の馴れなばか一日も君を忘れて思わん」 「来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ」
灰屋紹益 灰屋紹益は、囲炉裏や竈の灰を買い集め、それを染物屋、焼物陶器屋、和紙製造者などに売って巨額の富を築いた京都の元禄豪商の一人。 灰屋紹益は当時京都で有名だった二代目吉野太夫と恋仲であった。 太夫は三六歳でこの世を去る。紹益は太夫を荼毘で送りその遺灰を美麗な壺に残らず集め、その遺灰を毎日少しずつ酒杯の中に入れ、太夫を偲びながら酒とともに全部飲んでしまったという。
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