土木の歴史絵本 第5巻 青山士 八田與一 久保田豊 かこさとし作
札幌農学校で内村鑑三たちと学んだ廣井勇は、米国留学の後、東大教授となる。 廣井勇は、仕事と人格を通じ、机の上での勉強だけでなく実際に役立つ技術を伝えることをめざした。 土木の仕事とは、ほんとうに人々の役に立ち人生を豊かにするためにあるのだと、学生たちに熱をこめて教えた。
そうした師廣井の教えを胸にいだいて海外で活躍した教え子がいた。 青山士、八田與一、久保田豊などである。この巻ではこの3人がなぜ外国に行ったのか、海の向こうでどんな仕事をしたのか、そして、海の向こうの人たちがその仕事をどのように見ていたのかをたどることにしよう。
青山士 磐田市出身 パナマ運河工事で7年半働く。荒川放水路を建設する。信濃川大河津分水可動堰を完成させる。
八田與一 金沢市出身 台湾の嘉南平原かんがい計画を立てる。嘉南大しゅうを完成させる。
久保田豊 熊本県宮地町出身 鴨緑江に水豊ダムを完成させる。日本工営を立ち上げ海外でコンサルタント業をする。
「土木の歴史絵本」完結によせて 土木建設の仕事は「汚い・きつい・危険」のいわゆる3Kの世界で、それに携わる人々は誠にご苦労なことであるが、内情にくわしい方に聞くこと、さらに「金」のかかる4Kだという。工事には多額の費用が必要となるけれど、個人の資金などではなく、国や地方の税金、公共予算がうごめくため、忌まわしい事件や疑惑が後をたたないとのことである。そうしたなか、本シリーズを読まれた新聞人から、相変わらず続く建設土木界の談合・腐敗体質を嘆き、本巻で描かれている先人たちの品格ある信念、高潔な人格に恥ずべきことを指摘された。 (北海道新聞 1999年11月)
子どもの絵本ではあるが、土木学会が支援している本なので土木史の裏づけがある。 この3人をもとに土木学会は土木技術者の映画を製作した。 しかし、当時世界一の水豊ダムをつくった久保田豊をはずしたのは残念なことであった。
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