この本も インターネット世界でのネットワークのことをあつかっているが 具体的な人間のつながりの例が多くあつかわれているのでわかりやすい。
啓蒙書としては、先に上げた本より、こちらのほうがすぐれていると思われる。 たとえば、国と国との結びつきの度合いを反映した国際関係ネットワークの図が示され、そこには同盟を結んでいる二つの国は枝で結ばれている。 別の例では、食物ネットワーク、つまり食うと食われる関係を表す食物連鎖の図も示している。 航空網や道路網や鉄道の路線図なども、身近なネットワークの例である。
仕事で行き詰まったとき、上司や同僚と話せば、相応の専門的な助言が期待できる。 ところが、全然仕事とは関係ない人と話してみたら、よりすっきりしたり、思いがけない視点が得られることがある。 江戸時代の日本は鎖国をしていて、海外に開かれていた出島や朝鮮通信使からの情報だけでは世界の情報が不足していたことからもわかるように、閉鎖的な社会では情報不足に陥りやすい。
自分の知人を見渡して同質な人ばかりなら、自分の周りのネットワークが情報の近道を欠いている可能性がある。 情報を求める気持ちや好奇心があるならば、外の風が入るように自分の周りを意識的に変えなければならない。 一番簡単な方法は、複数のコミュニティに属するよう意識することである。 いろいろな性格の異なる、違う目的のネットワークにつながるようにしておけば、いやでも情報は多く集まってくる。 もちろん、情報がたくさん入ってくると、よい情報だけでなく、不要な情報、デマ、悪影響、借金とか病気なども近寄ってくることがあるから、諸刃の剣であることを心に留めておこう。
人間社会はほおっておけば均等ではない。まず人はウマのあう人と一緒になりやすい。 人望の高い人や面白い人の周りには人が集まりやすい。人が集まると、その人の評価はさらに上がる。 個人が利益を求めると、自然に不均一なネットワークになってしまうものである。
ほおっておくと不平等が現れがちであることを考えると、ネットワークの仕組みから、ネットワークの中での位置どりについて何か教訓を得られないだろうか。 こうして、ネットワークのハブに相当する人物の役割に思い至る。 ハブの一挙一動は多数の人に注目されている。ハブは多数の枝を通じて情報を迅速に集めたり、多人数へと情報を発信したりすることによって何かの大きな活動を起こさせるかもしれない。 ハブとなるためには基準は三つある。まずは個人の能力である。冗談が面白い、頭の回転が速い、人に話しかけて友人になるのがうまい、外見が魅力的といった要素は、枝を獲得する際に有利である。 これらの才能でぬきんでていれば、ハブになれる可能性は大きくなる。自分を磨いたり、人間関係に多く時間を費やしたりすることによっても、枝獲得力をある程度高めることができるだろう。 個人の力が似たり寄ったりだと、枝を増やすためには、先住権のあるものが有利である。先にネットワークに入っていて、人より長い時間ネットワークに住んでいるほうがいい。最初のうちからネットワークにいる人は、ほかの人よりも後輩を多く持ち、後輩と枝を作るチャンスが多い。 ビジネスでも、他人よりも先に種を見つけることが肝心で、先を越されると挽回は難しくなる。最初に動いて足場をすばやく固めて定評を得ると、その後がやりやすい。 日常生活で知人とネットワークを結ぶときも、早いうちにある程度のハブとなってしまおう。そうすると、自分よりも対象高い能力を持つ人が後から来たとしても、すでに自分がつくった牙城を崩すことはかなり難しくなる。
友人関係も同じだ。ある小学生が転校したとする。新しい学校のクラスには、すでに人間関係ができている。ガキ大将や人気者、それをとりまく子たちなどがいる。やってきた転校生は、もしかしたら前の小学校のクラスではガキ大将であり、中心的存在になる素質があるかもしれない。時間がたてば、転校生はクラスに打ち解けるだろう。目立つ存在になってくるかもしれない。しかし、新しい学校では前の学校と同じ位置になれるとは限らない。新しいクラスにはすでに先住者がいて、人間関係があるからだ。
能力・先住権に勝るとも劣らないくらいハブになるための要素が運である。 能力・先住・運、この3要素があるとハブになりやすい。すべてが必要なわけではなく、これらの要因はそれぞれ人がハブになるときに貢献するのである。
知力・体力・時の運 これらは何をするにも大事なことである。
だが、ハブになったらなったで、ハブは大変である。 なにしろ他の人にくらべて多い人間関係を維持するのは大変なのだ。時間もつぎこまないといけないし、お金もかかるだろう。 たまにはメールの返事もする。一緒に飲みに行く。年賀状も書くなど連絡を保つことは必要だ。 一人一人との関係が薄まりすぎたハブは、いつも忙しそうで、話したいけど話しかけてはいけない人だと思われてしまいかねない。 うまく時間を使って、インターネットを活用して、社交術もさりげなく身につけてと、なかなか忙しい。 こういうことが好きで意欲がある人が向くのであろう。
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