横見浩彦:JR全線下車の旅 KKベストセラーズ 2005
この本の著者は、漫画「鉄子の旅」に出てくる旅の案内人として登場した。 著者の鉄道旅体験は昭和53(1978)年 高校一年生の春休み時に国鉄の「乗りつぶし」の旅に出てからスタートする。 以来学校の休みを利用しては乗車距離を延ばしていった。 1978年に宮脇俊三の「時刻表2万キロ」がベストセラーとなり 国鉄も昭和55(1980)年に赤字対策の一環として「いい旅チャレンジ2万キロ」キャンペーンを展開した。 そして「青春18きっぷ」も登場して、全線完乗達成者は数千人とも数千万人ともいわれた。 この著者もとうとう昭和62(1987)年に国鉄路線を全線完乗した。
著者は平成4(1992)年にスキーのため花輪線の安比高原駅を訪れたが この駅は、昭和63(1988)年に龍ケ森という駅名をリゾート地にちなんで名前を変えたものだった。 ローカル線なので待ち合わせに@時間以上もあって、著者は所在なさに駅を観察しその構造をメモ書きする。 それからローカル線の駅を観察するようになって、その背景の地域の歴史とか駅のつくりなどに目がいくようになる。 こうして観察をするうちに、全国の駅にすべて乗降してみようということを考えたという。
上に紹介した花輪線でも各駅のホームを歩いたり駅舎をみるだけでも、全部の駅にそれをやるとしたら一日ではできない。 山手線のように数分おきに電車が来るなら、次の駅で降りて、あとから来る電車に乗って、もう一つ先の駅で降りてということを繰り返せばよいが ローカル線によっては一日に3本とか5本しか通らないところがあるから、そういう路線の各駅に降りるのはとてつもなく時間がかかる。 著者はやがて気がついて、折り返しやってくる列車を利用すればもう少し効率よくめぐることができる方法をとるようになった。 たとえば岩泉線では、一日に3本しか列車が走らないが、二つ先の駅に行ってから降りて、そこで折り返してくる別の列車に乗って隣の駅に降りれば、こちらからみると一つ先の駅にも降りられることになる。 それから、次の列車まで時間があるときは、次の駅までの距離が比較的短ければ、次の駅まで歩いて、そこから列車に乗れば、ひとつ駅を達成したことになる。
私ならこんなことはしない。何のためにするのか。記録のためにだけする行為は、とても私向きではない。 私ならそれだけ時間をかけて何かするのなら、もっと他のことをするだろう。 特定の地域の駅とか、そのローカル線の歴史などにふれたいときは、重点的にそこを乗ることがあるかもしれないが、とても全国のローカル線にそういうことをしていられないし、必要もないと思う。
著者はアルバイトをして金をためては、駅付近で野宿をしながら全部の駅のホームに断つことができた。 1992.2.12〜1995.10.20
こうして乗降をしてめぐった全国の駅の中には、当時はあったが廃止された路線や、その駅はもう列車が止まらず駅がなくなったものもある。 反対に利用者の増加で新しくできた駅もある。歴史は毎日作られる。
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