簡単な紙の橋で力学を実験する。 これは加古さとしの「よわいかみとつよいかたち」の本の紹介とおさらいになっている。 平らな紙一枚をそのまま使うより、折り曲げてVの字やLの字やUの字の形にしたほうが丈夫になる。 折り曲げた紙を組み合わせてHの字にして使うとさらに丈夫になるから、建築の鉄骨はこのHの形やIの形や□の形になっている。この説明は加古さとしの説明そのまま。 イギリスのブリタニア橋という□の形の箱桁の中をSLが通る歴史的な橋の写真が載っているのは貴重だ。
つぎに石で橋をかけることを説明している。丸木橋のように細長い石(石板)を川にかける。石の性質からして長い橋はかけられない。3.5mまでしかかけられない。 そこで、石のアーチが生まれるのだが、アーチ以前のせりもち橋の説明がある。このせりもち橋として、猿橋が有名である。 長崎のめがね橋が紹介されているが、木造アーチの錦帯橋はせりもち橋として紹介されている。 錦帯橋をアーチとするかアーチとしないかは見解がわかれるところであるが、この本ではアーチとしていないのは残念。
それからギリシアの神殿の遺跡は柱だけ残っていて、柱と柱の間に水平にかけわたした石(桁)は時間がたつとこわれてなくなってしまった写真が載せてある。 ローマ人の作った石のアーチは今も残っている。アーチは安定して強い橋形式なのである。ローマ人はアーチをエトルリア人から学んだ。 ローマのアーチ技術は中国にも伝わった。 この本には書いていないが、アーチの発祥の地はメソポタミアである。西に伝わってローマのアーチとなり、シルクロードを経由して東に伝わって中国、韓国、日本のアーチとなった。
アーチの曲線を上下にひっくりかえすと、吊橋のメインケーブルの形となる。この本では懸垂線と述べている。 数学的には懸垂線だが、アーチ橋も吊橋も簡単に構造計算する時には二次放物線として計算する。これは教室でずっと教えてきたことです。
最後に作用・反作用のことを説明している。これは力学として大事なこと。 作用・反作用がわかったら構造力学は半分くらいわかったことになると思う。
著者は1930年生まれ。 東大教養学部で科学史を学ぶ。 1959年から1995年まで国立教育研究所に勤務する。 もう気がつかれましたか。 数日前に紹介した「白菜のなぞ」はこの著者の本です。 http://www.mellow-club.org/cgibin/free_bbs/wforum.cgi?no=15813&reno=no&oya=15813&mode=msgview 子どもに科学をわかりやすく説明するのが、だから上手なのです。
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