山上健康:キムチの味 (1995)
今から15年も前の本なので 交通機関については古い。 宿のことなどで変わらないこともあるが。
慣れないオンドル部屋で寝たおかげで、のぼせて鼻血を出したりした著者 オンドルの床に、カメラと電気ひげそり機をじかに置いて寝たら 朝はカメラも電気ひげそり機も、オンドルの温度で熱くなっていた。 はじめ、電気ひげそり機は熱のため作動しなかったが、熱から冷めると、もとどおり作動するようになった。 オンドル部屋は暖かすぎる。夏にはさすがにオンドルは入れないだろう。 オンドル部屋では、そういうわけで床が暖かいから、洗濯物を乾かすには適している。
慶州の仏国寺は有名な寺である。 この本によると 仏国寺は535年に創建され、200年後の最盛期には、現在の10倍のスケールにまで拡大されたが、豊臣秀吉の戦争で焼かれ、いまの建物はそのあと再修復されたものという。 石造部分だけは、当時のままで、石像技術の精巧さは1500年ちかくたってみなお美しさが際だっている。 (ここの石階段と階段の裏側にある石アーチが見る価値がある)
さて この仏国寺を訪れた著者たちの前に現れた清楚な感じの女子大生は まじめな態度でガイドをしてくれた。 将来は日本語の通訳ガイドになりたいという。 謝礼に5000ウォン(750円)渡そうとすると受けとらず、自分がアルバイトしている、お土産店に立ち寄ってほしいと頼まれる。 その土産店は、高麗青磁と李朝白磁の陶芸品や、数珠と漆器の工芸品が、棚やショーケースに陳列されている。 なにしろ二月に行ったため時季はずれで客は誰もいない。 暇をもてあましていた店員らしい二人のアジュモニ(おばさん)と一人のアジョン(おじさん)がいた。 彼らが店内に入ると、絹織りの派手なネッカチーフを首に巻いたアジュモニが流ちょうな日本語で話しかけてきた。 「そこのソファーにお座りになって、お茶でも飲んでゆっくり休んでください」 ネッカチーフのアジュモニが、陳列品のなかからアメジストの指輪と首飾りを取り出してガラス・テーブルの上に並べた。 「奥様にこの指輪はいかがですか?」とか 「お嬢さんには、このペンダントがよく似合うと思いますが?」とか にこやかな表情巧みな話術で、次から次へと品物を取り出しては、買わせようとする。 この著者は事情があって家族に内緒で韓国旅行をしているものだから、娘にペンダントを買ってやるのは自ら墓穴を掘るようなもの。 はじめは何も買わないつもりだったが、親切なアルバイト女子大生へのお返しに、暖かい膨らみの形をした青磁の夫婦湯飲みセットを買うことにする。 しかし、とことん値切って買ったので、ネッカチーフのアジュモニの表情がだんだん無愛想になり、さきほどまでの愛想笑いがなくなってしまった。 (この店は仏国寺に行けばあります)
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