いま売れっ子の水木しげる NHK出版の本
左手を失ったから 戦場でも病院に入れられ 危険なところから少し外され、それによって生き延びることができた。
腐りかけのバナナはうまい。 見かけはよくないが美味しい。 八百屋で安く買ってきて夫婦で食べた。私も一緒に食べたい。 食べものは痛みかけの時がうまい。それを越えると危険だが。
紙芝居でも貸本でも仕事がなくなって食えなくなった時 貸本出版の長井勝一がはじめた月刊雑誌「ガロ」に連載が載るようになってから 水木の漫画家人生が軌道に乗った。
鬼太郎の成功はねずみ男にあり 漫画の主人公はいいことばかりやっていると、話が面白くならない。 悪いことも少しやっていいということにすると、面白いストーリーができる。 いいことばかりやって感心するようなストーリーは、やがて人気がなくなる。 「墓場鬼太郎」の頃の鬼太郎は、多少は悪い子だった。 ところがアニメの鬼太郎は、いつのまにかいい子になってしまった。 制作する側が、悪い子を主人公にしてケチをつけられちゃたまらんというので、どうしてもいい鬼太郎になりがちになる(スポンサーやテレビ局はいい子の主役をのぞむ)。 でも、それだけでは、面白くなりかねるところがある。
そこでがんばってくれたのが、ねずみ男だった。 汚い役とか悪い役、ずるい役を、ねずみ男が全部一括して引き受けてくれた。 アニメの鬼太郎が面白くなったのは、ねずみ男のおかげといえるだろう。 鬼太郎の成功は、ねずみ男の成功である。 カネや欲望に忠実で、それがために鬼太郎一家と敵対することもあるねずみ男 徹底的なリアリストで、夢想家や理想主義者に対しては手厳しい意見を言うことがある。
水木しげるが言うように 手塚治虫も石ノ森章太郎も漫画を描きすぎて疲れて死んでしまった。 ほどほどに描くから水木はまだ生きているのかもしれない。 短い人生でも啄木や一葉は大きな仕事をして、彼らの何倍も生きた凡人は何も残さない。人生は長さではなく質なのだろう。
紙芝居も劇画貸本屋もテレビに食われて衰退してしまった。 水木しげるにとっての天敵のようなテレビであったが テレビアニメのゲゲゲケの鬼太郎で水木は人気漫画家となる。 手塚治虫が人生を賭借金までして育てた日本のアニメは 宮崎駿に受け継がれ いっぽう水木たち漫画家を救ったのだった。 ドラえもん作者も。
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