ペレリマン:物理のはなし 著者ヤコフ・イシドロヴィッチ・ペレリマンは1882年生まれのロシア人、1942年に亡くなった。
火で火を消す 山火事あるいは草原の火事のとき、森林や草原に反対側から火をつけるのが、もっとも良い消火方法、ときには唯一の方法だ、という話をおそらくみんなも聞いたことがあるだろう。
この新しい炎は、えんえんと燃えさかる火の海に向かって進み、途中燃えるものを焼きつくし、延焼を防ぐ。そして双方の火の壁は、ぶつかったとたんに消えてしまう。
アメリカの作家クーパーは、「大平原」という小説の中で、年とった猟師が、草原で火事にあった旅人たちを、この方法で救い出した劇的な場面をみごとにえがいている。
老猟師のつけた火が火災の方に燃え広がり、自分の方に進んでこなかったのはなぜだろうか。自分たちのいる方が風下なので、火がこちらに向かっていたのである。ふつう考えたら、老人がつけた火は、火災の方に燃え広がらず、逆に自分の方に向かってくるはずである。
老猟師の方法の秘密はどこにあるのだろうか。それは簡単な物理学の法則の応用である。風は、燃えている草原から老猟師のいる方に吹いていたが、かれらの前方の火の近くでは、炎の方に向かう逆向きの気流が存在していたのである。火の海の上方の空気はあたためられ軽くなって上昇し、そこに燃えていないまわりの草原から新しい風が吹いてくる。だから炎の近くでは、空気が炎の方に引かれる。つまり逆向きの気流が生じる。向かい火は、この空気の引き込みが感じられるほど火災が近くまで迫ったときに、つけなければならない。 老猟師はこの瞬間がくるのを待って、仕事にとりかかったのは、このためである。空気の引き込みがないうちに、草に火をつけたら、火は自分たちの方にひろがり、みんな焼け死んでしまうだろう。また逆にすこしでも火をつけるのがおくれれば、火があまりにも近く迫っているため、やはり焼け死ぬことになるだろう。
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具体的な例をあげて物理法則を説明するので なるほどと思って読んでしまう。 ヤマトタケルノミコトの智恵は、昔から世界的に知られている迎え火の知識だった。
この本には他にもおもしろい例がいっぱい紹介されてあります。
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