雪室俊一:テクマクマヤコン
脚本家 サザエさんなどのアニメのシナリオを書いて糧を得ている。
テクマクマヤコンとえば この脚本家の手がけた ひみつのアッコちゃん と 魔法使いサリー のうちのどちらかだが、わかりますか。(答えは最後に)
脚本家は注文が来ないと干上がってしまう。 どんなに忙しくても引き受けないと、いったんプロデューサーから めをかけられなくなると終わりになる。(今忙しいから余裕がでたらなど答えたら、一生仕事が回ってこないケースが多いという) 水木しげるもそのコワサを知っている。ダメと言われてボツにされたら、もう仕事はこない。 水木しげるなどもう仕事をしなくてもよいのだが、いまだにボツだという夢を見るらしい。そういう緊張のなかで今も描いている。
酒とケータイ ある女性エッセイストが「ケータイは便利だが、自分の青春時代になくてよかった」という文章を書いている。 この著者も同感と描いている。もし著者の高校時代にケータイがあれば、別の人生を歩いていたろう。 異性に興味を持ち出す年齢だから、ハマるのは出会い系サイトに決まっている。毎月のバイト代はすべて通通話料に消える。 当時、浴びるように見た映画も観ることがなかったろうし、本を買う余裕もない。映画に縁がなければ、シナリオに関心を示さない。きっとシナリオライターをめざさなかったのではないか。 では、なにになっていたかというと、一流企業に就職するような実力はなかったから、次々と職を転々、いまでいうフリーターの生活を送り、気がついたときは段ボールハウスの住人になっていた可能性大である。 この著者が酒を飲み出したのは、三十代になってからで、それまでは飲みたいと思ったことはなかった。 バイト先で飲むチャンスがないこともなかったが、職場の先輩たちは、未成年ということもあって、無理に酒をすすめることはしなかった。 みんなが酒盛りをしているとき、著者は懸賞に応募するシナリオを書いたり、本を読んでいた。一緒に飲んでいたら、確実にデビューは遅れたろう。 酒を飲まなければいけないようになったのは、プロになってからだという。打ち合わせの後とか、番組の打ち上げだとか、やたらと飲む機会が多い。 酒の飲めなかった著者は、その場を逃れることばかり考えていたという。 酒の苦手な著者が酒を飲むようになったのは飛行機に乗るようになってから。この著者も飛行機嫌い。離陸する時死ぬ思いだった。そのひきつった顔を見て、みんながビールをすすめる。だがビールをいくら飲んでも酔わなかった。それくらい緊張していた。行った先のスペインでは食事が口に合わず、日本と同じ味がするのはパンとビールだけだった。今でも覚えているスペイン語は「ウノ セルベッサ」(ビール一本)だけ。湿気の少ない土地のスペインではビールはうまかった。それから少しずつアルコールを飲むようになったという。
シナリオは2Bの鉛筆で書くのが伝統であるが、この著者は万年筆を使っていた。 あるとき、ワープロを使うライターの原稿を見て、きれいな原稿で読みやすいから、自分でも思いきって買って使うようになったという。 すっかりワープロ党になった著者は、パソコンにはなじめないようである。ワープロは専用目的なのに、パソコンはデパートのように多機能で、それゆえ使いにくいという。使い慣れたワープロ機が壊れたら、もうワープロは製造していないし、売っていないから、さあどうするのだろう。
* 赤塚不二夫:ひみつのアッコちゃん 横山光輝:魔法使いサリー だから、赤塚不二夫の「ひみつのアッコちゃん」が答え。 * 魔法の呪文「テクマクマヤコン」や、 アッコの飼い猫「シッポナ」の名は原作にはなく、脚本の雪室俊一がつけたもの。 この本によると、作者のいたアパートの向かいの家に住んでいる女の子が自分の飼い猫をシッポナと呼んでいたのを借用したという。
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