上巻と下巻の二冊になっている。 まだ全部読んではいないが だいたいのところをまとめると以下のようになる。
高峰秀子は函館に生まれた。 4歳のとき義母にもらわれていって 以後東京で生活するので、彼女は東京人だと思っている。 北海道出身といわれて、ああそうかと思うがまったく北海道人だという自覚はない。
彼女の実母は彼女が4歳のときに亡くなった。 棺おけに座る姿勢で入れられ周りを綿のようなもので包まれ 首だけ出した姿が母の最期の姿だったという。
彼女は子供がほしいという父親の妹から、強い希望で 生まれる前から養子にいくことを約束されていたという。 彼女の上には男ばかり生まれていたので、今度も男だろう、だから養子に出すのもよかろうと両親も考えたらしい。
ところが生まれたのは、はじめての女の子だった。 それをみると両親は手放したくなくなった。女の子だから手元において育てたくなった。 父の妹は約束だからと何度も家に来るが、そのつど追い返されてしまう。 そして、母親が死んで、父もこのままでは育てるのは大変と思い 妹に娘を養女として渡したというのであった。
彼女自身は継子だということは自覚していたが、義母はなるべくそれにふれたがらなかった。 そして、幼い彼女を大事に育てた。幼い彼女も実の母親のようにあまえた。
彼女の義母は、大家族の中で、外に飛び出したくてチャンスを待っていた。 そこに活動弁士の男が現れた。冷静な判断なしで、彼女はこの男にとびついた。 活動弁士の男の影響で、彼女も女弁士になった。そこで、時代はかわり 無声映画の時代は終わった。トーキーの時代に弁士はいらなくなった。 男はほかに女を作り、高峰秀子の義母はさみしさのはけ口を継子に求めた。 高峰秀子というのは義母の芸名であった。義母は娘に自分のはたせぬ夢を託した。
幼い継子との生活の中で 義父は、映画会社が子役を募集していることを知り 継子を応募させることを思いついた。 多数の応募者の中から、彼女が選ばれて、そこから彼女の人生は大きく変わる。
以後、彼女は映画から離れられなくなる。 毎日撮影に明け暮れ、小学校も欠席がち、いまなら社会的にも法律的にも許されないことだが 幸せなのか不幸なのか、高峰秀子の奇妙な映画スター人生がくりひろげられる。
彼女の義父は、継子の収入が入ると、また外に女を作り 義母はとうとう彼女を連れて、義父のところから飛び出す。 結局、義父は捨てられた形となる。
美空ひばりの例をあげるまでもなく、母一人娘一人の芸能生活は特殊なもので この関係から離れられない母親は、結局娘の幸せをうばうことになる例が多いのだが 高峰秀子の場合、しっかりものの娘とヒステリーの母親の対決があって 彼女は幸せな結婚をおくることができる。
彼女の北海道の家族は やがて有名になった女優高峰秀子の収入を当てにして 彼女の周りに集まり、彼女のお荷物となる。
親戚も貧乏な人のところには寄りたがらない。貧しいと親戚も誰も寄ってこない。 ところが、こちらにお金があるとか有名だと、知らなかった親戚まで現れて近寄ってくる。アリが砂糖に集まってくるように。
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