池田光雅:朝から晩までローカル列車三昧
買い物風のおばさんが荷物を座席に乗せていたので「ここあいていますか」と声をかけて座る。いいトシをして常識のない人が増えている。 近くに立っている学生は、しきりにコンコンと軽い空咳をする。若者の間に急速に蔓延している肺結核の典型的な症状なので気味が悪い。
高崎から水上に向かう列車の中での風景。新前橋で三両編成になると同時にドアが半自動になる。降りていった女高生は、テレビが伝えていた「埴輪スタイル」だ。スカートだけでは足が寒いので、下にぴっちりしたバミューダ風のズボンを重ね履きしてこの名があるそうだが、なんとも珍なる装束である。
新津から酒田に行く列車が新発田駅に停まると、日曜なので普段着でミニスカートの女子高生が乗ってくる。上州の「埴輪スタイル」とは対照的である。
三江線は三次まで二時間四十一分、トイレなしの列車はつらい。この著者は水断ちをしてなんとか走破した。途中、ホームにトイレのある駅もあるが、乗務員に声をかければ対応するといっても、子連れか病気の年寄りなら声をかけるかもしれないが、そうでない乗客は声をかけるのははばかられるだろう。
只見線のローカル線は青春18切符の客ばかり。 それでも、枯れ木の何とかでからの列車を走らせるよりはいいだろう。
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なにやら 宮脇俊三の鉄道レポートのシリーズを思わせる文章で きっと影響をうけたのであろう。
自分でも乗ったことのあるローカル線の文章を読んでいると 当時のことが思い出されて面白い。 冬の旅はけっこう過酷だが車窓の景色も夏などと違ってまた興味深い。 雪崩とか崖崩れのひんぱんに起きそうなところに、道路や鉄道がつくられているのを見ると 建設当時の苦労が偲ばれる。
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