おそらく たいていの若者はこの漫画を読んでいるだろうが 改めてここに書いておきます。 「龍」 村上もとかによって 1991年から2006年までビッグコミックオリジナルにて連載された歴史ロマン漫画 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BE%8D-RON- 1996年:第41回小学館漫画賞受賞
村上もとかは、「六三四の剣」が盛岡を舞台にしたように 岩手の出身ではないが、岩手にちなんだ話を扱うことがある。 なんでも友人に会いにきて岩手が好きになったらしい。
この漫画も、ヒロイン田鶴ていを岩手の貧しい農村出身としている。
この漫画の主役押小路龍の恋人 田鶴てい チチキトクの電報でふるさとに帰る。 東北は今年も大凶作で娘の身売りが続く。
おさななじみの友だちがみんな集まる。 大地主の小原の娘(友達で田鶴ていにも良くしてくれた)は、父の借金のため妾になる話がおこり 妾になるのをいやがって 恋人庄三と心中未遂を起こすが、結局盛岡の金持ちの妾となる。
大凶作では秋祭りも中止だった。 みんなを元気づけるため、田鶴ていを中心に村の若者たちは芝居をすることになる。 一週間後に鬼剣舞のかっこうをして村人に芝居上演を知らせる若者。 そして、当日に芝居の舞台が進むと同時に いっぽう大地主の小原家では大変なことになっていた。 (ストーリーのテクニックとして、同時進行の話を進める作者)
庄三はついに小原家の主人を殺そうと刃物を手にする。そこへ盛岡から来た娘の光代が現れ、それでは光代も殺して自分も死ぬという庄三に お腹の中の子供は庄三の子だと光代は言う。 観念して、子供の将来を願う庄三は刃物を置く。
東京に帰って 小田安次郎の「息子よ」で若妻杉子役でひかる演技をした田鶴てい 彼女は大女優となる。 (小津安二郎がモデル?)
舞台は満州に移り 関東軍から大満州航空会社顧問になった龍に依頼が入り 新京から奉天に大型旅客機を飛ばせ、奉天で重要人物を乗せて新京に戻ってくるようにと。 甘粕正彦は満州皇帝を送る一緒の飛行機で のどの渇いた皇帝に龍が提供するワイン その皇帝の飲んだボルドーワインを甘粕も飲んだ。フランスにいたときよく飲んだという甘粕の言葉。 だが、フランスの思い出は楽しいものではなかったという。
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甘粕正彦大尉といえば 大震災後、大杉栄と伊藤野枝と、さらに、いたいけない6歳の子供まで殺した人物とされ 軍法会議で裁かれ、千葉刑務所で刑に服したが その後フランスで妻と数年暮らしてから日本に帰ってきた。 私の読んだ本には、罪を自分がかぶった甘粕正彦であったが 結婚するとき相手の女性から聞かれ、自分は殺していないということを伝えたので その女性と結婚したことになっている。 (結婚の相手の女性もその家族も真相を知りたかったらしい)
はたして甘粕正彦は大杉栄たちを直接殺したか、そうではなかったか それは今もなお謎である。 この漫画では、甘粕正彦は人情をわきまえた魅力的な人物として描かれている(彼は組織のため罪を一人で背負った)。
この漫画のヒロイン田鶴ていのふるさとを岩手の貧しい農村としているが そこはおそらく当時の沢内村(さわうちむら)であろう。 沢内村は岩手県の内陸中部、奥羽山脈のふもとの豪雪地帯にある。
沢内甚句 「沢内三千石お米(よね)の出どこ、桝ではからねで箕(身)ではかる」 和賀川上流の沢内盆地は米の産地として知られる。 沢内村には、江戸時代に年貢を納めることができなかった庄屋(名主)が 娘のおよねを領主に差し出して、免除してもらったという話がある。 およねは、およね地蔵にまつられている。 条件の悪い沢内村で三千石も米がとれたはずがない。 これはかわいそうな村人とおよねを唄った歌だと教えてくださったのは、いまはなき農学部畜産科の菊池修二教授でした(菊池修二先生は岩手大学マンドリンクラブの創始者です)。
中国の実冷の地黒竜江省で水稲栽培を成功させ 中国政府から感謝されたのは、沢内村の「水稲王」藤原長作さんでした。 http://pub.ne.jp/2135dera/?entry_id=1624968 この話は日中共同制作のテレビドラマとなり長く歴史に残ることになったのです。
沢内村は、現在隣の湯田町と合併し、西和賀町となりました。
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