自由と規律―イギリスの学校生活 (岩波新書) 販売中です
書かれている内容は、戦前の話であり、出版されたのは戦後間もない1949年です。
占領下の日本の小学4年だった私は、戦後まもなく、校歌のなかの「忠孝進取」という部分が 校長さんの手で「自由民主」と書き換えられていたのを見て、いささかあっけにとられました。 クラスメイトのなかに「なんでも自由やったら、隣の子の弁当取り上げて食うのも自由と違うか」という子もいました。 この本の中には、そういう我々の疑問に答えるカギがあったと、当時の私には思えました。
もう一つ、お相撲で問題が起きたときに必ず出てくる「品格」の問題。 あの「品格」も、日本独特のものではなく、西洋にもあるのだな、 「武士道」とは少し違うけれど西洋にも「スポーツマンシップ」というものがあるということも 戦争中に育ち、外国、とりわけ西洋の事情に疎い世代に属する私に深い感銘を与えてくれました。
高校生くらいになって、読み返してみますと、このお話は、 あくまで「一部の特権階級」のみが享受していたエリート教育についてのことであり 英国国民のだれもが、この素晴らしい教育の恩恵に浴していたわけではない、 ここに出てくるパブリックスクールは、全寮制で、しかも両親の住む都会から離れたところにあったので 「ひどいイジメ」などの温床になっていた。 卒業生の多くは「子供といえども一人の人格として扱う」教育をうけていたのに、 植民地の人たちなどの人格は無視しがちであったなどなど、 いろいろ批判するようになりました。
さらに大人になってから、もう一度読み返してみますと この本は著者の池田 潔さんが「英国のパブリックスクール」に舞台を借りて 当時の日本人へ発信したメッセージとして受けとればいいのだな、 祖国の若者への熱い思いが、池田 潔さんに、この本を書かせたのだな と思うようになりました。
この本は「若い人達にすすめる本」のなかに必ず出てきます。
やはり、いろいろ批判はあるものの「自由」について、考える際に、 読んでおくべき本だからだと思います。
若い皆さんにおすすめします。
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