戦前「少年倶楽部」の名編集長だった加藤謙一が、公職追放され 妻名義で興した出版社である学童社の「漫画少年」に 1950年(昭和25年)11月号から1954年(昭和29年)4月号にかけて 手塚治虫に描かせた古典的名作漫画である。
当時の私は貧しかったため、この雑誌を祭の縁日で買ってもらった。 たぶん、売れ残り品を安く手に入れた露天商が売っていたのであろう。
それはともかく、この漫画は私に大きな影響を与えた。 この漫画ではドイツの地理学者ウェーゲナーの大陸移動説を紹介している。 大西洋をはさんだ南米大陸の東海岸とアフリカ大陸の西海岸が ジグソーパズルのようにぴったり組み合わされるということに気がついて 地質学、古生物学、古気象学からウェーゲナーが大陸移動説を発表したのは 1912年であった。
当時は、そのメカニズムがわからず学会から相手にされなかった。 そして、1950年代から1960年代にかけて、古地磁気学や海底構造の研究が進み 大陸は移動しているという証拠が続々と見つかった。 今では、マントル対流により、地殻の上のプレートが沈み込んだりするプレートテクトニクス理論が常識となり、地震の原因の説明もこれによって行われている。
ジャングル大帝の描かれた時代は、まさしく大陸移動説が学会で再発見されつつある次期だったのですね。 手塚治虫の最新科学を取り入れる才能と熱意はたいしたもの。
漫画ではロマンを大切にして 大陸が移動する力をアフリカの高峰ムーン山の石に求めている。 ライオンの王レオを中心とし、その父母および子どもを含むドラマであるが レオたちがムーン山に上り大陸移動説の秘密にチャレンジすることで話のまとめをつけている。
|