小学生の時 炭坑の町に住んでいました。 そこはもう炭坑は閉山になりましたが 私が住んでいた時は、たくさんの人たちが住んでいました。 小学校や中学校のクラスの規模で説明するなら、私の(同じ学年の)同級生は約250名いました。 町には映画館があり毎日外国や日本の映画を替えて上映していました。 「風と共に去りぬ」や「シェーン」とか「青井山脈」や「絶唱」などの映画の名前は覚えています。
銭湯も大きく立派で、温泉地にもないような大きな風呂がありました。 一度に百人以上入られるのではないかと思いますが あんがい子どもの時の記憶はあやしくて、今大人の目で見たら三十人くらいがいいところかもしれません 大浴場の他に、薬湯とか小さい浴槽もありました。
あるとき、その小さな浴槽にタオルを落としてしまいました。 大人に言えばよかったのですが、とっさにお湯に手を入れてタオルをとりだしました。 そこまでは良かったのですが、お湯はとんでもなく熱くて、おそらく五十度以上はあったでしょう。 お湯の中に数秒間手を入れただけなのに、手はやけどをしたようで 半月ほど痛くてしようがありませんでした。 当時の医学の知識では、やけどは冷やしてはいけないということでしたが 冷たい布団の下に手を入れると痛みが一瞬薄れ、救われたような気持ちになるので 冷たいものの下にしたりしていましたが、医学の知識からすればいけないそうなので、罪悪感をすこしばかり感じていました。 今はやけどは冷やすべし、ですね。 昨日の常識は本日の非常識。医学の知識も学問の進歩で変わります。
さて 以上は私の話でしたが これから書くのは知人のあぶない目にあった経験です。 その知人はコンクリートの研究者で いろいろな環境でのコンクリートの品質がどうなるかという研究をしています。 そこで、コンクリートにとって厳しい環境の、酸性度の強い温泉の中に コンクリート供試体をしばらく入れておいて、その後一定期間がたってから その供試体を回収にいったのでした。
ところがその現場で、あっというまに大地がなくなった つまり足場の岩が突然崩落して、その研究者はあっという間に 腰までお湯の中に入ったのだそうです。 幸い仲間がいたので、すぐ助け出されたのですが 数秒の間にやけどをしてしまって、なかなかズボンがぬげなかったそうです。 どうやら、強い酸性の温泉のため、丈夫な岩も時間の経過とともに劣化して、ある瞬間に上に乗った人間の重さに堪えきれず破壊してしまったようなのでした。 ですから、野外の温泉地などを歩く時は気をつけてください。有毒ガスもあります。
それでも、なんとか自宅に帰り、ねんのため近所の病院に行って診てもらったら いちおう薬をつけて経過を診るということになったそうです。 翌日は講義の日なので、なんとか講義を終わらせホッとしたら 夕方になって痛み出し、とても我慢ができず、大学病院に行って そのまましばらく入院したそうです。 いまは元気になり、活発に仕事をしています。
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