画像サイズ: 640×426 (72kB) | 湯河原千歳川の川沿いを歩く。 毎日の日課だ。 湯河原は海岸から箱根との境の大観山までの約10kmの間の標高差が約1000mある。 その箱根から流れ出す千歳川は比較的急流だ。 と言っても散歩道のこの辺りはもう海まで1kmもない。 折からの春光を浴びて漣が白く光るのは中流と言ったところだろうか。 その中流に半年くらい前から鯉、多分鯉だと思う、が居座っているのだ。 30cm位の大きさで、背中が白く下部が青か灰色、尾の部分と右目の下辺りがやや黄色のような感じだ。 何処かで飼われていて逃げ出した緋鯉だろうか。 それにしても不思議なのは、常に棲み付いて居るところが川の流れの真ん中なのだ。 井伏鱒二の「山椒魚」の様に二ヶ月の間に成長してしてしまって穴蔵から抜け出られなくなってしまった訳ではない。 その気になれば川の流れに添って上流でも下流でも自由に移動出来る筈だ。 その場所に何か特徴が有るかと言えば、その鯉が居なければその場所を特定するのも難しい何の変哲の無い流れの一部なのだ。 強いて言えば幅が2、3m、長さが5m位のその一角だけがやや窪んで流れがやや淀んでいる。 しかし、そんな窪みはこの川筋の何処にでも有る。 常に上流を向いており、時折、尾びれをひらりひらりと動かしている。 流れに流されて来る何かを捉えて生を保っているのだろう。 孤独を楽しんでいるのだろうか。 座禅でもしているつもりなのだろうか。 老境の入って動き回れないのかも知れない。 もう半年も居座っている、もしかしたら半年前に気が付いたのかも知れない。 それにしても不可思議だ。 もう直ぐ恋の季節がやって来る。 |