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[No.6574] 点子ちゃん、初めまして! 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/06/08(Sun) 12:19
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子どもの頃は、読書好きで、よく読んだつもりだが、家に本があまりなかったので同じ本を何度も読んでいたように思う。

 よく本屋で子どもの本棚を見ると、ああ、これも読んでいない、あれも読んでいない、と残念に思うことしばしばである。


 先日、図書館で「日本少国民文庫・世界名作選(一)」というのを借りてきた。目次をさらっと見ると、まず目に付いたのが武井武雄の「赤ノッポ青ノッポ・スキーの巻」という漫画。武井の絵は彼独特で、子供のころ大いに愛読した。この(一)には有名なカール・ブッセの「山のあなた」、ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」も収録されているが、あの20代で相対性原理を発表したという、アインシュタインの「日本の小学児童たちへ」という一文は、集中でも特に貴重な文章だと思う。

 あっしの今日、取り上げようと思うのはじつは、分量から云っても、面白さから云っても、集中のピカイチだと思う、エーリッヒ・ケストナーの「点子ちゃんとアントン」である。お恥ずかしい話だが、あっしは、この年になるまでこの本を一度も読んでいなかった。

 読む機会は何度もあったのだろうが、点子という奇妙な名前にもなにか、引っかかる所があったのも事実だ。

 だが、この点子ちゃんは、ページを繰るごとに獅子奮迅の大活躍、このつぎはどうなるかどうなるかと、読者を飽きさせない工夫が種々あって、実に読んで楽しい物語である。

 読んでいてまた、いろいろ考えさせられもする。「部屋が十も」あって、その上、家に「大型のメルセーデス」のあるようなお金持ちの点子ちゃんと、その日の暮らしにも困るような貧乏人のアントンは、大の仲良しだ。この二人は困ったときは、お互い助け合うので、万事うまくいく。

 所で、西欧の金持ちの家では、住み込みの家庭教師と云うのを雇う。これはむかしロシアの小説を読んだときから、あっしも一応は知っていた。とことが、この小説ではこの女がとんでもないワルで、恋人の男にお屋敷のカギを渡して、強盗をやらせたりする。

 作者のケストナーは、ドレスデン生まれだが、お話の舞台はベルリン。随所に船大工河岸だのフリートリヒ通り、砲兵隊通り、ザックスさんのどこかに書いておられたシュプレー河なんぞが出てくる。行ったものにはきっと懐かしいことだろう。

 あと、この屋敷には、でぶのベルタと云う体重が80キロもある女中がいるが、この女がまた素晴らしいのだ。家庭教師のカレが、家族の留守を狙って忍び込むという情報を事前に得たベルタは、物陰に隠れて待ち伏せし、侵入と同時に男を棍棒で叩きのめしてしまうのだ。さすが、ゲルマン民族は違うわいと、あっしなど、すっかり感心してしまった。

 それから、章ごとに、文末に『反省』と称する教訓ばなしがつくのがチョット気になるが、ケストナーの文章がもともと、すごく面白いし、高橋健二の訳文がそれに勝るとも劣らぬ出来栄えであって、あっしなど、申し分ないと思う。

 飼い犬のビーフケも、一生懸命、点子ちゃんのお手伝いをしているので、これをうっかり書き落とすと、後で左足の脹脛をいやっと云うほど噛まれるかもしれない。(^_-)
       
                                (おわり)


[No.6575] Re: 点子ちゃん、初めまして! 投稿者:マーチャン  投稿日:2014/06/10(Tue) 09:36
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唐辛子紋次郎さん

>  それから、章ごとに、文末に『反省』と称する教訓ばなしがつくのがチョット気になるが、ケストナーの文章がもともと、すごく面白いし、高橋健二の訳文がそれに勝るとも劣らぬ出来栄えであって、あっしなど、申し分ないと思う。

 私、ケストナーの大ファンなのです。

 「飛ぶ教室」「エーミールと探偵たち」など。

 登場する少年は、イタズラもするが、みな親思いで、正義感が強い。

 高橋健二さんの名訳で読みました。

 

 


[No.6576] Re: 点子ちゃん、初めまして! 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/06/10(Tue) 12:47
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  マーチャン、みなさん、こんにちは。

> >  それから、章ごとに、文末に『反省』と称する教訓ばなしがつくのがチョット気になるが、ケストナーの文章がもともと、すごく面白いし、高橋健二の訳文がそれに勝るとも劣らぬ出来栄えであって、あっしなど、申し分ないと思う。

>  私、ケストナーの大ファンなのです。

>  「飛ぶ教室」「エーミールと探偵たち」など。

>  登場する少年は、イタズラもするが、みな親思いで、正義感が強い。

>  高橋健二さんの名訳で読みました。

  そのうち、「飛ぶ教室」というのも、読んでみたいと、思いました。パロディ小説の名手、清水義範の「飛びすぎる教室」という題名も、この小説からとったそうですね。

 それから、点子と云う名前も面白いですね。点は、ドイツ語でプンクト。点子ちゃんは、点のように小さいので、プンクトヒェン。ま、そんなに小さいのはいないので、これはチョット大げさですが…。(^_-)

 むかし、何かで読んだ、音楽の『対位法』は、コントラプンクトというそうですね。