人垣のくずれて神輿立て直す
トラックに乗せて団地の祭りかな
団地の六階に住んでいます。笛と太鼓の音が近づいて来たのでベランダから見ると、 小型トラックに乗せた神輿がそろそろと動いていました。この辺りはまだ畑があって 田舎だと思っていたのですが、なぜか車に乗ったお御輿なのです。
羽田空港の近くに住む友人に誘われて、お祭りに何度か行ったことがあります。 空港の中に近隣の町内の十何台かが勢揃いする様子は壮観でした。現代を象徴する 飛行機、その爆音と離発着を目の当たりにする中に神輿を見るのは、そこだけがタイム マシンで昔に引き戻されたような感じがします。
そこから産業道路まで競い合って神輿は進みます。それぞれ町内の特色のあるのぼりや ちょうちんを前にして、威勢のいい掛け声とともに担いで行き、決められた所で揉むの ですが、それはみごとなものです。
担ぎ手には若い女性も多くなりました。友人の町内のお御輿について歩きながら自分も 担いでいるように興奮してしまいます。そして揉まれた神輿が集まった人垣の中に倒れ 込んでくるような気がし、人々が思わず崩れるように後退をした瞬間、神輿は立て直し ていました。そんな間近に神輿を見ることはまれになってしまいました。
私は大森の生まれで、この羽田とは隣という所に住んでいたことがあり、小、中学校は そこで過ごしたのですが、お祭りには友だちと連れ立ち、今日はお稲荷さま、貴船さま、 今夜は弁天さよ、などと、貝殻の捨てられて真っ白になった道を、大きなわら屋根の軒 下を、花の咲く原っぱを、川の土手を走り抜けたことを懐かしく思います。
平成8年ころのことですが、今でも羽田空港から、産業道路までも神輿担ぎがあるのか どうかわかりません。友人も歳を取ってしまって、年賀状くらいの付き合いになって しまったのです。長い道のりを、神輿とともに歩き、時には担ぎ手や見物人と会話してと、 とてもいい思い出となっています。今、どうしているでしょうか?
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