画像サイズ: 720×480 (90kB) | クルドという言葉を初めて聞いたのははるか昔である。国を持てず苦労して いる民だと聞いた。しかし、それはすぐに頭の隅の奥の方に入ってしまって、 思い出すこともなくそれから何年も過ぎた。
その言葉を再び耳にしたのは、いつのことか、湾岸戦争(1991年)の頃では ないだろうか。イラクの大統領サダム・フセインがクルド人に化学兵器を使用し たというのだ。それはひどいというので、次第にそのことがあちこちで噂される ようになった。
そうなると、ちゃんと調べもせずに、長い間放置していたのが申し訳ないような 悪いような気になってきた。
おおよそのことはすぐに分かった。約3000万人くらいいて国を持たない民と しては最大だ、20世紀初めオスマン帝国崩壊時に列強にトルコ、イラク、イラン、 シリアなどの国にバラバラにされて生きてきたこと、自分の国を持つことを悲願 としてきたこと、トルコに1000万以上、イラク、イランにそれぞれ500万 くらいいることなどが分かって来る。つまりこの4つの国の国境近くに住んで いるということである。
人種的には、アラブ系でもトルコ系でもなく、インド・ヨーロッパ語族に属し、 イラン人に近いことなどがわかる。宗教はスンニ(ナ)派が多数、しかし、特殊 な宗派もあるようだ。
しかし、このような文字の情報だけでは、クルド人のイメージがまるでわかない。 クルドという言葉の響きのせいか、そうではないのに、アラブの仲間のような気 さえしてならなかった。
色々と知って以来、クルド人に是非現地で会ってみたいものだと思うようになっ てきた。
それがやっと実現したのは、2011年の10月のことである。思いがけない時に イラン(ペルシャ)旅行が実現し、幸運がやってきた。
2011年当時、イランと米国の関係は最悪であった。米国は核査察を受け入 れないイランを経済封鎖その他で圧力をかけていた。イランは対抗してホルムズ 海峡封鎖をちらつかせていた。
そんな時にイランを旅行するなんて危ないではないかという声も聞こえてきた。 しかし、実際に入国してみて、又後から分かることだが、中は安定していて危険 を感じることはなかった。そして、今のイランと米国の関係を見ると、3年前の 危機は一体なんだったのかという思いも湧く。危機とは意図的に作り出されるもの ではないかとも。世の中の変化は早い、振り回されない知恵を持たねばと思う。
テヘランを経由して、イラン北西部の大都市タブリーズに飛ぶ。イラク、トルコ、 アルメニア国境に近い地域である。つまりクルド族が散在して住んでいるところ である。そこからバスでザーグロス山脈に沿ってひたすら南下する。この山脈は イラク国境から100−200kmくらい離れて平行して走っている山脈である。
ガイドは、1980−1988年のイラン・イラク戦争の時、この山脈の西側は 激しい戦場になったことを話してくれた。イラクのクルド人がフセインに化学兵 器を使われたのはこの戦争の時、クルド人がイランの味方をしたことを報復され たとのことである。
バスガイドがクルド人の特徴をその時々に教えてくれる。男性は服装特にズボン に特徴があると教えてくれた。クルドの女性は大変に美しいと言った。インド・ ヨーロッパ語族の特徴を備えていると。
ガイドはトルコの血が入ったイラン(ペルシャ)人だったが、クルド人に対して 優しかった。虐げられている民族の特徴を持っていて、お互いの間での支え合い や、弱い人に対しての優しさを指摘した。一方、虐げる者へは強く反発することも。
ザーグロス山脈を南下すると、「コルデスターン州」にさしかかる。コルデスタ ーンとは、あの「クルディスタン」のことである。クルド人の住む地域を意味す る。彼らの憧れる「国」を連想させる。この州の西側はイラク国境線である。
この地域には、多数のクルド人がまとまって住んでいるとのことであった。 そして、山脈の峰に沿ってバスは走っていたのだが、賑やかな音楽が聞こえてきた。 なんだろうと窓からのぞくと、綺麗な民族衣装を着た男女が集まってお祭りを しているようだ。ガイドが、あっ、これは結婚式だ。降りようと言って、バスを 止めて皆を促す。
クルド人に近づくというので、皆おそるおそる寄って行く。ガイドはつかつかと 寄っていって、日本人観光客であることを告げる。主催者も親族など参列者も、 喜んでこっちへと誘う。写真をいくらでも撮らせてくれた。花嫁、花婿もポーズ を取ってくれる。主催者がお茶を飲んで行かないかと言っているようで、お客を もてなすのは彼らの当然の慣習とのこと。ただ、時間がないので、ガイドがそれ は丁重に断っていた。
待っていた絶好の機会だったが、後ろ髪を引かれる思いでバスは出立する。 山脈を走り続けて更に南下した。
結婚式の写真を1枚アップしておきます。
(つづく) |