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[No.6862] ポンペイと視察団 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/10/28(Tue) 23:42
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ポンペイと視察団
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 別に驚くべきことではないのかもしれないが、実は明治初年の岩倉使節団も、ポンペイへ行っているのだ。

 記録者・久米邦武が豪語するように、出発より1年9か月を費やして見学しただけあって「米欧両州著名ノ都邑ハ、大半回歴ヲ経タリ」という言葉にうそはない。


 その記録も「此書分ッテ五編百巻トナス、」とあるだけあって大部のものである。もっとも、巻というのが、現在の章に当たるらしいから100章といった方が分かりよいかも知れぬ。岩波文庫で5巻分ある。

 ただ現代人が読むにはちょっと注意がいる。たとえば、太平洋は太平海、大西洋は圧瀾的洋などとなっている。第一編は米利堅合衆国ノ部で、これを何と「メリケン合衆国」と読ませている。さて、ポンペイの項だが、以太利(イタリー)は、その第73巻に載っている。

 ポンペイには明治6年の5月22日に入っている。ここには「モン、ヴェスシウオ」火山ノ麓ナル、ポンペイ村ニ至ル」とあり、当時の人口は67戸で、寒々とした村落だったようだ。

 2000年前の大噴火についても記述はあるが、有名な79年のではなく、20年ほど前の紀元56年のものを記している。地下に埋もれた街発掘の経緯も、詳細に述べられている。

 嘗て市民の買い物の中心地だった商店街にも逐一、説明がある。一行にとっても、このポンペイは大変な驚異であったとみえ、噴火による受難を「実ニ未曾有ノ災ナリシヲ知ラレタリ」と慨嘆し、またその後の発掘を「欧羅巴ノ一大奇事トイウヘシ」と結んでいる。

 この回覧実記には「ポンペイの古街」(背景には噴煙を上げるヴェズーヴィオの姿も)「古観場趾」(市民の熱狂したあの闘技場である)「古死屍」(例の焼死体)「古画」(軍神マルスとヴィーナスを描いたもの)など、銅版画による図版も数多く、これを読めば、たとえ米欧へ行かずとも、立ちどころに、それ相当の知識が得られ、あっしはこれは大変な労作であると思う。

 また、ことわざについても、世界的に有名なVedi Napoli e poi muoriも「以国人ノ諺ニ、那不児ヲ一覧シタル後ニ死ナント謂フ トナリ、以テ其名勝ノ地タルヲ知ヘシ」とあって、抜かりない。ちなみに、以国人はイタリア人、那不児は、今のナポリのことである。

 あっしはこの「特命全権大使 米欧回覧実記」を以前から一度読んで見たいとは思っていたのだが、なにせ文章が古く、その上地名などの表記が現在とかなり相違するので、今までずっと敬遠してきた。これがひょんなことで、読む羽目に(^^♪なってしまった。それは、

 たまたま、ポンペイ関連の資料探し中、1997年に横浜美術館などで開催された「ポンペイ壁画展」の画集を見ていたらジーナ・アシオーネという研究者が、「ある神話の誕生ーー日本使節団とポンペイ(1871−1900)」という論文を書いていて、それで知ったわけである。

 ジーナ・アシオーネ女史は、資料を博捜し、あっしらの知らないことを次々『発掘』する。さすが、ポンペイ考古学監督局主任研究員(当時)だけのことはある。(^^♪

 まず、日本と西洋との出会いから説き起こし、岩倉使節団をはじめ、日本人でポンペイを訪れた人の名を次々と、これでもか、これでもかと並べ立てて来る。日本人はこんなに、ポンペイマニアだったかと、初めて認識した次第である。有栖川宮、大山元帥、山県有朋、夏目漱石(出土品を見た)などなどである。

 面白いのは岩倉使節団は、建築、彫刻には多大の興味を示すが、キリスト教の宗教画には全く無関心であった、と。また、女史の論文で、使節団が目撃した石膏による遺体の保存法は、ポンペイ遺跡の責任者フィオレッリの時代に初めて用いられたというから、彼らは幸運にも最新の技術に立ち会ったわけである。高貴、高位の人々が見学すると、わざわざ実際の発掘の作業を見せたというのも、あっしには初見であった。女史が、この文で「回覧実記」の実際の版数、発行部数にまで触れているのも、あっしにとっては、驚きの一つである。                        (おわり)


[No.6865] Re: ポンペイと視察団 投稿者:GRUE  投稿日:2014/11/02(Sun) 18:00
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紋次郎さん、こんにちは、

明治初年に、岩倉使節団がポンペイへ行き、詳しい記録を出していたというのは
しりませんでした。面白いですね。

欧米から新文物を導入して日本の近代化を推進する視点がどこにあったかを知る
上でも意義がありそうです。記録を一度読んで見たいものです。


[No.6866] Re: ポンペイと視察団 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/11/07(Fri) 10:43
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>  まず、日本と西洋との出会いから説き起こし、岩倉使節団をはじめ、日本人でポンペイを訪れた人の名を次々と、これでもか、これでもかと並べ立てて来る。日本人はこんなに、ポンペイマニアだったかと、初めて認識した次第である。有栖川宮、大山元帥、山県有朋、夏目漱石(出土品を見た)などなどである。

G.アシオーネ女史に教えられて、漱石の遺跡訪問に急に関心が高まり、地元の図書館に「日記」(全915ページ!)の貸し出しを依頼。それがきのう、S町の図書館から届いた。欣喜雀躍、さっそくその個所を開いてみると、あっしの期待を裏切って、その記事はあまりにも短かった。(*_*;

 明治33年10月18日。どうやらポンペイの遺跡を訪ねたのではなく、出土品の置いてある博物館へ行っただけのようである。出土品についても詳細には触れず、ただ「発掘物非常ニ多シ」でおわっていて、感想の一言もないので、やや失望した。

 翌19日には、もうジェノバに、到着している。

 漱石が、ポンペイをPompeyと綴っているのが気になった。案の定、わきに解説者のsicというしるしがついていた。説明ではこのしるしは、欧文の間違いであるようだ。

 文豪でも英文学者でも、間違いはある紋だ。(*_*;ちなみに、英語ではpompeiiとiをふたつ,書くようだ。(ジーニアス英和辞典)

 蛇足:sicというのはラテン語で、『原文のまま』という意味のようだ。
 


[No.6867] Re: ポンペイと視察団 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/11/07(Fri) 12:27
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崩壊するのは、何もベルリンの壁ばかりではない。ポンペイの遺跡でも崩壊は続いている。つい最近でも今年3月に『ヴィーナスの神殿』で、崩落が確認された。

 これら修復には従来からEUの援助金が充てられているが、ローマをはじめ遺跡だらけの国ではとても、それだけでは不足、しかも国内の予算も文化面の切り捨てが目だち、到底賄いきれないらしい。そこで、レンツィ首相の呼びかけで、国内の大手企業が、いくつか援助に乗り出している。

 たとえば、ローマのコロッセオは高級靴の大手『トッズ』が、映画などで超有名なトレビの噴水では、世界的なブランド『フェンディ』が、それぞれ手を貸している。

 ところが、今度はポンペイで人員不足から、こうした問題を討議する労組の集会が、昨日から廃墟内で開かれ、事情を知らずに訪れた数千人の観光客は柵の外で、足止めを食らっているという。

 『レプッブリカ』紙によると、その数はきのうと今日とで、2000人に及んでいるという。

http://napoli.repubblica.it/cronaca/2014/11/06/foto/pompei_bloccata_dall_assemblea_turisti_in_attesi-99904639/1/?ref=HREC1-23#1

 ダリオ・フランキーニ文化相(文化財、観光などを担当)は、ツィッターなどで、こうした遺跡の閉鎖は、国家に対し、計り知れない損失を与えると訴えている。


[No.6872] Re: ポンペイと視察団 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/11/09(Sun) 11:05
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今までにポンペイ遺跡を訪れている有名無名の人はかなりの数に上るはずだ。

そこで、あのイタキチのフランス人、(かれのモンマルトルにある墓碑銘には、イタリア語でミラノの人、アッリゴ・ベイル、書き、愛し、生きた、と書かれている)スタンダールはどうだろうと、かれの「イタリア紀行」を広げてみたが、そこには残念ながら、音楽のことしか書いてなかった。(きょうはどこそこの歌劇場へ行った、きのうの歌手の出来栄えはこうだった、とか)そうか、

 ナポリには行っていないのか。この作家は、あまり、大昔のことには興味がないのかもしれぬ。


[No.6873] ヴェズーヴィオ火山の脅威! 投稿者:唐辛子紋次郎  投稿日:2014/11/10(Mon) 11:20
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いやあ、スゴイビデオを見つけました。この山は18世紀に入ってからも、19世紀、20世紀と、相変わらず衰えを見せずに、活動を続けているのですね。(@_@;)(@_@;)

 直近と云えば、1944年3月で、あっしの子供の頃です。「♪登山電車ができたので〜♪」の歌でお馴染みの、ケーブルカー「フニクリ・フニクラ」(ルイージ・デンツァの作曲)は、開業64年目にして、不運にもこの大噴火に遭い、あわれにも全滅してしまったのです。(現在は開業中のよし)

 このヴィデオをみると、いちいち年号が大きく入っているので、いかに頻繁にこの火山が、噴火を繰り返しているかがわかって、背筋がぞっとして来ます。

https://www.youtube.com/watch?v=7bkdrwoRVTk