KANCHANから送られたエッセイを掲載します(GRUE)
----------------------------------------- 新版 点と線 KANCHAN
3月に訪問したブラジルの叔母の家で、こんな相談を受けた。
実は昨年の11月頃、一通の手紙が、日本の中国電力から届いたという。内容は、叔母が権利を持っている山口県の土地の上を、中国電力の送電線が走っている。その土地に生えている木の枝が伸びすぎて、送電線に届きそうである。このままほっておくと危険なので、枝を短く伐採したい。ついては叔母に同意してほしいというものであった。
叔母はびっくりした。山口県の土地のことなど初めて聞いたという。一族が集まって協議しているうちに、中国電力から電話が掛って来た。叔母と比較的日本語の分かる者が応対に出て、とにかく伐採の同意書にサインして送り返したという。
今回私がブラジルに行ったので、帰国したらその土地の事を調べてもらえないかと相談を受けた。
4月の上旬私は山口市の中国電力の支社を訪ずれた。担当者が宇部空港まで出迎えてくれて丁寧に現場まで案内してくれた。
問題の土地は中国道ぞいの山の中にあって約3千平米ほど、それも傾斜地でなんの使い物にもならないようなものであった。叔母の姉の御主人の名義になっていて、2人ともすでに他界していた。
中国電力の担当者から苦労話を聴いた。当初親類縁者が一切見つからなかったという。役所に行って調べ、近くでの聞き取りをやるなどして、漸くブラジルへ行った一家の事を突き止めた。そしてサンパウロの山口県人会に叔母の名前を見つけたという。ちょっとした松本清張ものであった。
亡くなった土地名義人夫婦の兄弟姉妹で存命中なのは、叔母ただひとりであった。しからば、その土地の名義はどうするか。私も元銀行員であり、相続問題の処理は大変難しいことは分かっていた。例え、土地名義人の兄弟等が皆亡くなっても、その子がどこかにいれば、そのものにも相続権はあるのである。結局担当者とも話あったが、土地名義はそのままにしておくしかないということになった。日本中にそういう土地はたくさん存在するらしい。
話はかわる。私は山口市へ、羽田から宇部まで全日空で飛んだ。シニア割引で1万2千円。朝10時15分発で宇部着11時55分である。新幹線では8:40発、新山口13:22着。先日テレビ朝日で松本清張ドラマ「点と線」をやっていた。4時間の長編で、ビートたけしが渾身の演技で評判になったものであるが、このミステリーのトリックは、有名な「空白の4分間」の他に、犯行現場福岡香椎にたいし、犯人と目をつけた男が北海道札幌に1日の差でいたというアリバイ崩しが焦点であった。答えは今では何のことは無い飛行機利用なのであるが、あの小説が書かれた1957・8年当時、国内線の利用はまだ珍しかったらしい。読者も夢中になって謎ときに挑んでいたのだ。
もっともブラジルの親族達は、日本は新幹線があってうらやましいと話していた。
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