画像サイズ: 300×340 (79kB) | 頑張ってね! KANCHAN
その日は第一木曜日で、D.H.ロレンスの英文講読のクラスからの帰り道であった。駅前のバス停で並んでバスを待っていると、2・3人先で、高校生らしい少女が、分厚い原書を開いて読んでいた。しばらくして分かった。それはハリーポッター・シリーズの一冊であった。人の見ているところで、原書を開いて読むということはなかなか勇気のいることである。しかし彼女は全く気おくれをする様子はなく、熱心に読みふけっていた。
バスが来て、みんなつぎつぎと乗り込んだ。彼女は私の真向いの席に座った。私は興味津々津々で、話しかけるタイミングを計っていた。バスが、私の降りる停留場の一つ前を発車したとき、私は立って行って彼女の前に立ち「ハリポタを読んでいるの?」と話しかけた。彼女はびっくりして目を挙げた。丸顔で健康そうな子である。慌てて頷いた。私は続けた。「小父さんも読んだよ。思い出のマーニーも読んだ。」思い出のマーニーとは去年評判になったスタジオジブリの少年少女向けアニメである。
「分からない単語があっても気にしないんだよね。どんどん読んでゆく。時には声を出して読むといいね。頑張ってね!」彼女が呆気にとられている間に、バスは停留所につき、私は出口に向かった。
変な小父さん。でもひょっとして彼女には私の言葉が励ましになったかもしれない。彼女の白いブラウスにカーキ色のミニスカートのことを妻に話したところ、それは著名な私立の進学校であると分かった。彼女はあるいは帰国子女か?
先日読売新聞に、高校生の英語の習得水準についての報告が乗っていた。約73%が中学生レベルでしかなかったという。そして、60%近い学生が「私は英語が嫌い」と答えたという。
文部科学省は、2020年東京オリンピックの開催もあり、高校生の英語学力の引き上げを課題としているが、読み・書き・聞く・話す、の4要素の水準引き上げは容易でないことが読み取れる。現状との懸隔は非常に大きいのではないか。
私は英語が好きで、この年まで、つかず離れずを心掛けてきた。私は原書はずいぶん読んできた。先日のブラジル旅行で、英会話に結構自信を持ったものであるが、書くことはやっていないし、英語ニュースの聞き取りもままならない。はてさて、日本国の中学高校生は大変である。
思いついて、中学2年生の孫を呼び寄せ。英語の個人指導の真似事をやった。彼を目の前に座らせ、リーダーを読ませて、私が英語で質問する。彼は英語で答えなければならない。
でも、こんなこと長続きするはずはないね。彼が英語嫌いにならないか?
(2015.6.15)
注:KANCHANから送られたエッセイの掲載です(GRUE) |